[5-02]ワキワキしてたんで殴り飛ばしました

あらすじ

「会長の力になるのが、私の仕事だから」

バカンスを楽しめないイケメン先輩を前に、ココアちゃんが拳を固める回です。

ビーチバレーよりもスイカ割り派です。スイカ割りの達人はラップの芯とかで練習して大会に備えている、そんな2節。

スタート!

ココア

んー……最初はどうなるんだとめちゃ焦ったけど、何だかんだで満喫してるなぁ。人類の適応能力はやっぱり捨てたものじゃない……

玉席特権、プライベートビーチバカンスタイム。

とんでもないアクシデントで開幕しつつも仕切り直して遊び尽くすご褒美タイムをココアはしっかり満喫していた。が、今は宿泊先であるビーチ上のログハウスに戻ってきていた。

ココア

それにしても、ツララ先輩のお家はやっぱり大規模なんだなぁ……あれ、でも私のとこももしかしてこんぐらい経営してる……? 帰ったらパパに訊いてみよ

タマ

あれ? ココアちゃん、どうしたの?

そんな水着ココアを室内で迎えたのは、本日もガードが堅い弐席であった。

温かみに包まれたログハウスの矢張り温かいオーラバッチシのテーブルにいつもの資機材を展開し、変わり映えのしない事務作業をしているようだった。

ココア

……タマ先輩、折角の林間学校ホリデーなのに

タマ

あはは、何かごめんね。でも、私、こういうのちょっと苦手で……

ココア

遊ぶの苦手って何か斬新です! でも水着くらいは着ないと

タマ

お肌を晒すのはもっと苦手で……

ココア

そうなんですか。それは残念だなぁ……タマ先輩の水着姿も見てみたかった(ツララ先輩が)

タマ

そ、それでココアちゃんはどうして戻ってきたの? 忘れ物?

ココア

ああいえ、想像以上に疲れたので休憩したいなって。というより状況的には避難か……

タマ

避難?

ココア

窓の外を見れば分かりますよ……

2人は美しいビーチを眺められる窓へと目を遣った。

バ会長

あっははは、流石ココアの鬱塁神荼!! どうやって勝ってやりましょうかねぇえええツララぁあああ!!

ユラ

君は勝利の擬人化だろッ、こういう時こそ勝手に勝利を持ち帰ってきたまえよッ! 言っておくが私は罰ゲームなんてプライドとブランドが赦さないからなぁあああ!!!

ダンベル

ほう、まだ勝つ気が残っているとは。これは久々に、腕が鳴りますね

ぐrrrrrr……(←轟音)

ハコ

う、腕が鳴らしていい音ではない……矢張り人間にあらず……(←恐怖)

ウミナリ

勝敗などどうでもよいことですが、たまには我が主にも恥を受け容れてほしいところではありましたね。良い機会です、誰も見ていないのを良いことに、日常に残す必要がないくらいに恥を晒して帰るとよいでしょう

マキ

……たかがビーチボールと侮った俺の怠慢よ……せめて審判に回っていれば……

ユサ

はーい、じゃあいい加減決着つけましょー(←審判)。じゃないとそろそろ砂浜まで安全と言いがたい雰囲気になってきてますよー

はしゃぐ少年少女プラス家政婦によって美しい砂浜は何故か焦土と化していた。

タマ

……ふふっ

ココア

タマ先輩、笑う要素無いですよ……私はお泊まりホリデーにも関わらずいつも通り泣きそうだったんですから

タマ

いや、でも会長は楽しそうだなって。なら、頑張って良かったなーって

ココア

あ……

タマは超本気で遊んでいるバ会長たちを眺めていた。

見守るさま。それを隣からココアを見守っていた。

タマ

まったくもう、本当に後先を考えないんだから……

ココア

……………………

…………しばらくして。

ココア

ふんすっ!(←殴)

ココアは自分の頬をグーパンして意識を無理矢理中断させた。

タマ

……え!? いきなり、どうしたの?

ココア

いえ、ちょっと……あんまり気持ちの良くない感情がワキワキしてたんで殴り飛ばしました……

タマ

え、えええ……? ダメだよココアちゃん、結構本気のパンチだったでしょ、念のため冷やそう?

ココア

すみません……

謎過ぎるココアのほっぺを取りあえずキンキンに冷やした飲料ペットボトルで冷やしてあげる形で、その時間そのものが中断された。

自業自得の気まずさに言葉困りつつ、ココアは意識を外から中へと向けた。

ココア

ところで……今は何の仕事をしてたんですか? まさか、もう一般の方でアクシデントが?

タマ

ううん、それは有難いことに特に発生してる様子はないかな。一応リアルタイム監視はしてるけど……それよりも今気になってるのはさっきの生物

ココア

ああ、巨大タコ……ダンベルが来てなかったら最悪、私達のスケジュール全変更も有り得ましたよね

タマ

既に参席のグループやココアちゃんのグループが調査に乗り出してるから私達の出る幕は殆ど無いはずだけれど、やっぱり気になって。どんな情報が返ってくるにしても、早急に対応できるようにしておかないとね

ココア

見た感じ、調べ物、って感じですね……

生徒会室で見る事務作業のため確立された画面構成とはまるで異なる環境。

ココアもあの時の混乱っぷりを思い返しながら、その調べ物のさまを眺め見る。

ココア

確かに、ツララ先輩の家が所有して管理している、安心と信頼のリゾートとは思えない惨事でしたよね。……それに最近、地震もかなり多いし生態系の変異も、結構ニュースになってるって

タマ

うん。何だか……この大陸は何かしらの変異の真っ只中にいるような、そんな気がしてる。気温の上昇も顕著だし、単なる温暖化なのか、それとも……

ココア

あはは、それこそ私達じゃもう何もできない領域ですけど……タマ先輩が真剣に悩んでくれてると、何かどうにでもなるって安心感が出てきます

タマ

……善処はするよ。皆の生活を守るための努力は惜しまない、それが玉席だから。……会長の力になるのが、私の仕事だから

ココア

……………………

ココアは強い意志を感じ取った。

ココア

ふんすっっ!!(←殴)

それから再び自分の頬をぶん殴った。

タマ

ええっ!? また!?

ココア

……すみません。ちょっと疲れてるみたいで……

タマ

や、休もうココアちゃん? よく分からないけど、割と深刻な症状な気がするよ……?(←冷やしてあげる)

ココア

えへへ、すみません……ありがとうございます……

という風に最も頼れる先輩を独り占めする形で、ココアもまた疲労しながらバカンスを過ごすのだった。