[5-07]そういう闇文化だし！
あらすじ
｢今ココに、品評会の開催を宣言する！！！｣
真夏の夜が、少年少女の心を解放する――！
ここから数回はセクハラしかない黒白情熱の７節。
スタート！
ハコ達が寝静まり、またはココアが魔の手に引き摺り込まれていたその頃。
林間学校の戦地を生き延びていた黑稜白泉の者達にもまた等しく夜は訪れていた。
最早お馴染み、黑稜と白泉の関係性といったら兎に角仲が悪いこと。そんな2キャンパスが寝食を共にするイベントであるのだから、これもまた殺伐極まれり。
……だが、そんなことを強制する林間学校においてはどんな化学反応も起こりうる。その1つが玉席のプライベートビーチ容認であり。
その他にも幾つかの｢文化｣が根付いているのである。例えば、この夜の光景。
……まったく、不潔なこと。白泉の連中と同じ屋根の下に休眠を摂るということ自体が嘆かわしいことこの上ないのだが、まぁ文化である以上は仕方ない
黑稜の坊ちゃん共でも文化に従うなんて能があったんだなぁ意外意外。まあ、俺たちも仕方ないから合わせてやるよ。文化だしな
言っておくが、あくまで文化だからだ！ お前達と同じ立場に降りてきた覚えは1つもないからな！
何を今更高潔ぶってんだか、要はアレだろ、俺らは漏れず野郎ってことだろ。恥ずかしがるのも諦めろっての
ふん、これは黑稜の我々としては実のところ、重要な戦略実践の1つなのだ。邪と一蹴するべからず、お前らとは違うのだ。では……始めるとするか
意気軒昂を歓迎しましょう。林間学校という特別な場ゆえ、黑稜白泉の垣根にあえて囚われることなく、自由な意見を求めます。すなわち――
今ココに、品評会の開催を宣言する！！！
｢｢｢ごくっ……｣｣｣
｢｢｢(結局最高に邪じゃね？)｣｣｣
ありていに言い換えると、枕と掛け布団に身を預けつつのボーイズトークが今から始まったのである。
ちなみにどこの部屋でも同じ類いの年頃な品評会が開催されていた。
ていうかよぉ、これは要するに気になる女子でトークしようってことだろ？ だったら黑稜側じゃあもう一択なんじゃねえの？
あー、ツララ先輩
不敬だぞッ、そんな呼び捨てに近い非公認の二つ名で軽々しく指を差すんじゃない！ 確かに、我らが氷条参席を語らずして誰を語るのかという話ではあるが
ブランドが最高峰だから、だろ？ 聞き飽きたわそのしっくり来ない理由――
一旦静粛に。進行役としてここで注意を挟みましょう。この品評会において、黑稜が不可避とする｢ブランド｣の戦略は用いないこととする――あくまでその者が有している具体的な能力・特長を評価し味わう場です
……つまり、お前達はバカにしているのかもしれないが、氷条参席が最も高嶺の一華だというのには相応の実力があるからなのだ。例えば……
そう、単刀直入に言えば、美人だろう――？
ああ……男嫌いである故か肌を男子に見せることは滅多にないが、服越しでも普通に伝わってくるスタイルの良さ。それに気品にも溢れているな……
まさに高潔中の高潔……！ 氷条とはよく恐れず上手に称したものだと思う……
言うほど高潔かぁ……？ 黑稜の感覚マジ分かんねえ。スタイル良い感じなのは同意だけどな。あとバ会長なんかと比べたら遙かにしっかり者って感じだし
朝とか寝坊したら怒られそうだよなー
｢｢｢な――｣｣｣
おい、目覚ましが鳴ってるじゃないか。早く起きて止めてくれ、そっちにあるから私じゃ止められない
……やっと起きたか？ 全く、約束をしたからには多少は責を身体に刻んでほしいものだが。君が幾らか朝が苦手なのは考慮してやるが
起きる時は一緒に起きる、だろ？ ……おはよう
――何で同じ布団で寝て、一緒に起きてるんだ！？ バチ当たりな妄想にも程があるだろうッ！？
とか言いつつお前ら率先して妄想してんじゃねえか！ ていうかそういう闇文化だし！
いつもはテキトウに挨拶するくらいだけど、いざマジメに考えてみるとツララって確かに良い女だよな……
妄想が捗るよなー黑稜の諸君！
｢｢…………｣｣
あれ？
……お前達は本当、気楽でいいな……いや、悪い意味じゃないぞ。氷条参席のことを悪く言うつもりは毛頭ないんだ、アレでいいのだ
だが、それ故に……恐怖がな……正味、最高峰の選択肢なのだが、果たして一緒に生活をしていて幸せを感じられる相手なのか、がな……
はぁ～……え、いつも求婚してるくせにそんなこと言っちゃうのコイツら？
てかそんなツララ先輩怖いの？ 俺あんま実感ないなぁ
それならそのまま遠くから眺める身でいればいい、その方がいいと思うぞ。そういう点では、下手したら海賊王の方が気楽なんじゃとすら思う時があるくらいだ
へーそりゃ面白いこと聞いた！！
ほう……白泉最大の問題児の品評に移りますか。普段は黑稜において論外一択とされている存在ですが、それもこの場ではそうとは限らないでしょう
ぶっちゃけ俺らでもアレは論外気味なんだけどなぁ。しかしまあ普段の言動すべてをシャットして考えたら……
｢｢｢抱き心地は良さそう……｣｣｣
｢｢｢…………(←沈黙は肯定)｣｣｣
でもなぁ、やっぱり性格がなぁ。そもそも俺、海賊王の名前知らないし。イオリッシュ……何だっけ？
コンデンエイネン＝シザイノホウじゃなかったか？
俺、ブケ＝ショハットだと思ってたんだけど
……名前は俺も把握できていないが、それは据え置くとして……1つ、気にはなる噂がとある界隈で拡がりを見せている
噂？
ああ、何でも、実は案外恥ずかしがりな一面もあるとか
｢｢｢え？｣｣｣
あと、眼鏡をかけて大人しい姿の目撃情報もあるとか
｢｢｢えええええ？｣｣｣
ば、バカな……！ あの海賊王に大人しめな一面が存在すると……？
性格に一抹の希望があると……？ つまり例えば、海賊王はだぜ口調じゃなくちょっぴり恥ずかしがり屋でコミュ障気味なのかなって具合の慣れてなさ露出口調の、大人しくて、ついでに抱き抱きしてってお願いしたら嫌々言いつつもゆっくり赦してくれそうな女の子という可能性があるわけ？
｢｢｢な――｣｣｣
な、ひ、膝枕……――？ この、海賊王イオリッシュ＝ブケショエイネン＝シザイノハットを単なる枕扱い？ ……何で私がそんな道具に成り下がらなきゃいけないのですか……べ、勉強や部活を頑張ったから、って。……な、なめないでください、貴方が学業も部活も努力していることは当然、私が一番知ってるなりっ。しかし休養をとるのを失念しては効率と結果は落ちるばかり。愚業です
……はぁ……仕方ありませんね。ほら……昼休み、まだ時間ありますし。幸い、屋上に人が来る気配もありません、から。膝くらいならちょっと貸してやっても、いいです……うぐ、この、恥知らずめ……海賊王の心広体胖を有難く思――ッ！？
な、ななっ何で腕を回してるの……！ ひッ膝枕は赦したけど抱き枕にしていいとは一言も――ッ……～～！ も、もう好きにすればいいなりっ。……むぅ…貴方は本当に、恥知らずです……
｢｢｢どっっっほっっ(←何か吐いた)｣｣｣
な――何という、破壊力……！ 流石パワータイプ、伊達に海賊王を名乗っていないということですか……！
く、ま、まさか海賊王でこんな気持ちにさせられるなんて――畜生、何でッ
実際能力は非常に優秀と監査官が評している、せめて、せめて性格が本当に――無念、何でッ
｢｢｢何でッ海賊王なんだッッッ――！！？？｣｣｣
闇文化に身を委ねる男達の妄想劇はまだ始まったばかり――。