[5-08]!?!? い、イケる――!!

あらすじ

「我々は戦争を強いられているのだ。つまり、負けることもあるし、負ければ終わりなのだ」

不敬が過ぎる品評会が続きます。

物書きは珍しくないハズですが、なかなか同じ趣味の人とバッタリできない8節。

スタート!

黑稜

グッ……か、海賊王のことで盛り上がるなど、如何に林間学校といえども黑稜のプライドが赦さない……!! 氷条参席へと舞い戻らせてもらうぞ!!

白泉

話題振ったのソッチの癖に! でもツララじゃ盛り上がれねえんじゃねえのか?

黑稜

……………………

黑稜

「「「やはり怖い……」」」

白泉

どんだけ日頃圧力喰らってんだよ……そんなんでブランドアップできんのかー?

白泉

ユサっちから聞いただけでよく知らんけど、黑稜じゃ婚活も割と重要ってんだろ? てことはお前ら基本的にツララ狙ってるってことじゃねーか

黑稜

……我々は戦争を強いられているのだ。つまり、負けることもあるし、負ければ終わりなのだ。最初から勝てないと分かっている賭けをやる莫迦がどこにいる?

黑稜

いるにはいるが、そういう奴は皆墜落していった……氷条参席は全く容赦しない女性なのだ……

白泉

男嫌いらしいしなー、俺も狙おうって気にはならないし

白泉

じゃあツララは諦めるってことか

黑稜

そうは言っていない! ただ、参席を直接狙うという愚は冒す気になれない。ブランド戦略の落としどころとしては、彼女に連なる者を狙うのが常識といっていい

白泉

何というか失礼の塊だなコイツら

白泉

学生のすることかよソレ……ん、てことはアレか、もしかして侍従のあの人が狙い目ってことになんの?

黑稜

「「「…………」」」

奉行

ふむ……次の対象は、ウミナリ侍従ですか……なるほど、やはり抽出せざるをえませんか……

白泉

……まあ、そりゃ沈黙したくもなるだろうけどよ……

白泉

ウミナリさんだって、美人の類じゃね? スタイルに関してはツララ嬢よりも男ウケいいぜ

白泉

けど流石ツララの側近っていうか似た者同士っていうか、中身がなぁ……攻撃の容赦なさは結構白泉でも有名だし、それもあってツララは弄り過ぎちゃダメって暗黙のルールができてるし

白泉

ツララ先輩は弄れてもウミナリ先輩は弄れない……何というか、あの人で妄想するのってもっと難しくないすか?

黑稜

意図的に強く隠しているのだろう、情報もなかなか出回らない……ウミナリ侍従という存在は実のところ相当に不詳なのだ。彼女に接近することが叶えば、一気に氷条参席のブランドグループとの提携もスムーズに行くというのに――

白泉

……あれ、そういやバ会長が言うには、学力はだいぶアレっぽいじゃん

黑稜

「「「え?」」」

白泉

……あれ、知らない? あのバ会長がバカにするくらいだからそれはもう相当なんだろうなって思ったけど……あー黑稜じゃ揉み消されてそうだなそういうの

白泉

じゃあソレばら撒いちゃったお前後日消されるんじゃねえの……? あ、そういやユサっち、あの人結構不器用ってばら撒いてた気がする。その後本人にしばかれてたけど

白泉

へぇーそれは何か、結構なギャップというか、ヤンキーに見えてくるというか

奉行

……つまり、万が一それらの情報が本当だとして――いや、この場では真偽はさほど重要でないですね、ともかくそれがウミナリ侍従の品評ポイント

白泉

……すまし顔で、平然と料理を失敗するクールなポンコツドジっ娘侍従――

黑稜

「「「――――」」」

ウミナリ

……何ですか、ドタバタと。厨房にホコリを上げて、料理に掛かったらどうするのですか。まぁ、幸いにしてこの通り、料理はまだ完成していませんが。……その目は何を伝えたいのですか

ウミナリ

…………。言っておきますが、失敗とかじゃないですよ。確かに少々荒れた光景を経由する羽目になりましたが、こんなの私からすれば失敗には含まれません。……含まれませんっ

ウミナリ

…………。と、とにかく、邪魔なので戻ってください。この私が用意すると言ってるんです、我が主はいつも通り、安心して期待を抱いて待っていればよいのです。ほら、さっさと

ウミナリ

…………次は、できるもん

黑稜

「「「!?!? い、イケる――!!」」」

白泉

「「「あれ悪くない!?!?」」」

黑稜

ッ、い、いくら侍従へとハードル下げたとはいえ不敬が過ぎるぞ貴様らッ

白泉

いやいやだからお前らが率先して妄想拡げてんだよッ、何だよ案外仲良くなれそうな想像力してんじゃねえか!

黑稜

だ、ダメだ、この思考は毒に近い……一旦氷条グループから避難したい……奉行!

奉行

わ、分かりました……いくら絶好の水準とはいえ氷条参席のグループを選り好み過ぎるのも平等なる舞台ではあまり良い運びではないのでしょう。引き続き、更なる価値観に縛られぬ次の品評へ身を投じましょう!!

白泉

えっと……ツララから離れた人ってか。そうだな……あ、じゃあユサっちは? さっきからチラホラととんでもない情報漏らしてるユサっちだって黑稜生だし、お前らも気にする相手なんじゃねえの?

白泉

あーユサちゃん、良いねー。黑稜勢にしては何というか、俺たち寄りっていうか

黑稜

お、お前達! それもまた不敬だぞ!! ユサ様はお前達、更には我々の遙か格上に立つ存在なのだぞ!

白泉

え、そうなの? つまり、ブランド的には凄いのか。本人全然その辺触れてこないけど

奉行

私も口を挟みましょう。早速ブランド語りになりつつあるのはよろしくありませんが……実のところ黑稜において、参席のグループを諦めるとするならばかなりの狙い目の存在にあります。かの伍席と非常に親しく将来の提携見込みを幅広く有している上に、ご本人がカースト相応のスペックを誇ります

黑稜

情報はあらゆる戦の根幹を担う資源。その収集力、そして操作を誰よりも心得ている。そしてココア様というある意味氷条参席よりも高楼大廈なバックを確保した上で非常にアクティブに戦略を実践している……しかも氷条参席ともそれなりにコミュニケーションをはかっている姿も目撃されている

黑稜

いつぞやマキ監査官も言っていたな……最も成長の著しい、最も警戒しなきゃいけない危険種だと

白泉

うわ、とんでもない評価のされ方してんだなぁ。まーそういうの関係無しに俺はユサちゃんのこと好きだけどな、馴染みがあるっていうか

白泉

活発な性格してて誰にも明るく話しかけるもんなあ

白泉

俺、マジメにユサさんと2人で遊びにいけるんじゃないかって思ってる

黑稜

それは無理だから諦めろ愚か者

白泉

まぁ歴とした黑稜生だし無理なんだろうなあ……でも、もし付き合えたとして、デートとか行ったりしたら……性格良いし美人だしスタイルも良いし、あっ超楽しそう――

黑稜

「「「――――」」」

ユサ

ふーー、ちょっと疲れたねー。ベンチ空いてて良かったねぇ、日曜日とか親子客の人口爆発で絶対空いてない類いのベンチ。平日にこんなに遊べちゃうのは、学生の特権かな。……まぁ、サボってるだけなんだけどねーあはは!

ユサ

っと、お腹空いたよね? 今日はねぇ、ふふ……ちょっと珍しく腕をふるってみたんだなあ。はい、がっつりなお弁当さんですよー。男子の胃袋、考慮済みサイズですよー。女の子にお弁当を作ってもらえるのは、彼氏さんの特権かな?

ユサ

……じゃあ、こういうことも、しちゃおっかな? 人目もあんまりないしね……はいしょ、あーーん。……ふふっ、私にあーーんってしてもらえるのは間違いなく、私の彼氏さんだけの特権だね♪

ユサ

美味しい? えへへ、そっか。じゃあ、次は……コレなんかご賞味あれ! あーーん――

黑稜

「「「ぐああぁああああああああああああああ――!!?(←咆哮)」」」

白泉

何という想像のしやすさ!! ツララ勢とは大違いだぜ!!

白泉

あれ……何か俺も今、すごくユサちゃんのこと気になりだした……

白泉

いやいや、少なくともお前よりは俺のユサちゃんだからっ

黑稜

な、に、をぉぉ……! 図に乗るな不敬どもォ!! ユサ様は、お嬢様なんだぞぉぉ!! 活発で、明るく優しく可愛く美しく笑いかけてくれるお嬢様なんだぞぉぉぉぉ……!!!

白泉

だんだんお前ら壊れてきてない?

自由での外れた男子達の真夜中の雑念は、まだ終わらない――