[5-01]う・み・だーーー!!!
あらすじ
「「う・み・だーーー!!!(←ヤケクソ)」」
一生に一度、稜泉の若者たちが弾け跳ぶ!
最長インサートエピソード「林間学校編」、のんびり降臨の1節なり。
スタート!
……さあ、ツララ先輩! ハコ! 合わせますよ!!
何でそんなことせねばならないんだ、私のキャラじゃないだろう
拡がる光景に想いをぶつけるのは吝かでもありませんが、どうしてココアなんぞとそれを共有せねばならないのか疑問なり
細かいことは考えないの!! 待ちに待ったでしょッ。ほら、いくよ……せーのっ
「「「海だぁーーーー!!!!」」」
唐突の叫びに、それをやるに相応しかろう格好と光景。叫んでいたように、今彼女らが水着姿でビーチに足を着けていることは想像に難くないだろう。
が、矢張り唐突。何故いきなりそうなっているのかはワケが分からなかろう。
ということで、フォローしますね! 私達が水着を着てる理由、それは他でもなく――稜泉学園最大級のイベント「林間学校」だからですッ!!
いきなり誰に説明してるんだフォロー伍席?
誉れ高き稜泉学園のA等部が勢揃いで参加するお泊まり企画、その浸透したラベルが「林間学校」。それ自体は名に違わず普段味わえないような空気に包まれ、都会のストレスを発散できる確かに楽しい文化である。
しかし問題は、これまで見てきたようにとっっても仲が悪い黑稜と白泉が同時に参加するということ。また黑稜に至ってはブランドの研磨を休戦するつもりのない連中のお陰で意図的に企画が荒らされるケースも毎年恒例となっている。
その背景から、このイベントで何よりスポットを当てられるのが、ココア達――すなわち玉席の手腕となる。企画や各方面への手続きから学生たちへの情報共有もとい事前講習、そして本番でのアクシデントもとい迷惑要素の排除、これらに率先して対応するのが玉席となっている。
修学旅行であったり文化祭体育祭であったりはそれぞれ専用の委員会が設置され、玉席はそのバックアップに回るポジション。が、この林間学校だけは玉席がほとんど総てを担う鬼の文化でもあるのだ。
当然、そんな文化をいつでも崖っぷちのバ会長政権が無視できるわけもなく、有能弐席と崇拝対象参席の徹底された働きによってガッツリ今年の林間学校は構成された。基本的に懸念されるイレギュラー事項を予め抑える手堅さを優先し、またそれでも起こりうる迷惑要素については即座に対処できるよう作戦と通り道を確保。玉席として全力を尽くした上で……
「「「海だぁーーーー!!!!」」」
と叫んだわけである。
この時点では玉席にとってはただただ憂鬱でしかないイベント。だが、玉席視点の林間学校にはもう一つの赦された文化が存在する。
それが、普段は有能な仕事人な彼女らが「解放された姿を見せる」イベントでもある、ということ。繰り返すがこの林間学校は結果的に玉席に相当のストレスを強いるタスク量であるが、総てを決定できることから、玉席の融通の利くようにも調整できるのである。
ということで「こんぐらい赦せや!!」と開き直ったいつぞやの玉席のプライベートビーチフリータイムを当時の新聞部が明るく広報にしてみたところ思いのほか一般学生の好評を獲得し、じゃあ翌年の玉席もそうしよう、と繰り返されているうちに形作られていった文化。
玉席の特典の1つなのだとすら解釈されるようになった丈夫な価値を以て、今年度の玉席もあやかることにした。だから!!
「「「う・み、だぁーーーー!!!!」」」
と、惜しげなく叫んでいるのである!!
青空を遺憾なく映す、美しいサファイアブルーへ向かって――
……って何じゃこりゃーー!?
――そこでようやっとココアは正気に戻った。
青色が申し訳なさそうに濁っていたからである。
……さっき見た時はまだマシでしたが、今は花畑脳のココアでも気付くくらいガッツリ濁ってるなり。どうなってるんですユラ、此処は貴方のところが所有するプライベートビーチ施設でしょう?
ああその通りだ、VIPをお気楽にもてなす為に確保している領地だ。だから品質管理もコンスタントに為されているはずなのだが……ちょっとコレは私も解せない事態だ
おうおう、はじけるお肌のガールズが濡れ遊ぶには抵抗のいる黒さだなオイ。あ、でも泥塗れになって遊ぶのもそれはそれで楽しいかもな、タマ
泥で汚れているとも限らないですし、衛生上の問題が拭えませんよ会長……それに、もっと心配なことが……
確かに。ここは我々が使おうとしていただけだからまだいいが、もしこういう全く想定してなかったイレギュラーが一般の連中のところでも発生していたら……
クレーム待ったなしなり。こういうのを防ぐ努力をしてたのではなかったのですかタマ
ごめん……
このビーチについては完全に私の領分。貴方が責任を感じるのはそれこそ誤りでしょう。ていうかタマくんのションボリ顔可愛すぎるブフッ(←鼻血)
ツララ先輩色々と台無しです……
ということで早速予期せぬアクシデントに足を止められた玉席。
うーーーん、と嘆いていた一行。どう次のアクションを決めようか考えあぐねていた。
……すると、先に環境が動いた。
――ん
バ会長?
何か海から来るぞ。注意しとけ
言われてココア達も気付き始める。わずかな振動音……それはやがて大きさを増していき。
そして一度、完全に消失した……十数秒後。
「「「……!!!」」」
大きく海水を空に吹き飛ばす勢いで、それは姿を起こした。
――――
え……えぇええええええ!?!?
こ、これは……こんな海洋生物が中央大陸の海辺に生息しているんですか、本当に管理していたのですかユラ!?
だから私も解せないと言ってるだろうッ!? ど、どうにかしろバ会長、君こういう荒事は得意だろ!!
まあ男手として働くつもりではいるけど、ちょっと様子が変だな……
変?
アイツ、まるで呼吸を感じない
体長軽く5mは越えている漆黒の海の生き物がガッツリインパクトを勝ち取る登場の仕方をしたことでココア達はすっかりパニックになっていた。
が、そこから状況はまた停滞していた。生き物はそれ以降、全く行動の気配を見せないのである。
た……確かに、全然動きませんね。それに心なしか、グッタリしてるような……
息絶えている……? でも、だとしたらどうやって上陸を?
……おや。既にご到着の時間を過ぎていましたか
「「「!?!?」」」
怪物が喋った。
……のではなく、誰かの人声が軽く響いた。何にせよビックリした一行だったが、巨大生物から一旦視線を、アイレベルへと戻していく。
……そして、よくよく見たらその人は立っていた。
申し訳ありません、極力害を撒き散らされる前に、と考えていたのですが。それ相応の抵抗を受けてしまいました
というか歩いてくる。
その巨大生物を背負うような形で、砂浜へと上陸してくる。
「「「…………」」」
その姿は少年少女を無条件で怯えさせるには充分な暴力に近い迫力があった。
知り合いどころか身内だったのか不幸中の幸い、真っ先に主人が震える足を動かし駆けつける。
だ、ダンベル!? どうして!? 何してるのッ!?
どうにも最近、海洋環境に不穏な要素が見え隠れしているといった情報を個人的に得ていたので。藍澤の管理が届いているとはいえ本来専門ではない領分でしょう、だから念のため調査をしていたのですよ。すると、この見慣れない漆黒の怪物を発見したので処理を
ダンベルさん武器は?
体液を淋漓されては海が汚れ皆様の支障になるかと判断し、素手で対応いたしました。しかし、墨を吐くあたり蛸の類いでしたか……危険要素でしたから強制処理は続行しましたが、これでは景観が台無しですね
ああうん、大丈夫……もう海泳ごうって気もジェノサイドされたから……ありがとダンベル、凄く助かった……
……本当に人間なのですか……?(←生命の危機)
少なくとも同じ人種ではないな……(←生命の危機)
あ、いた! おーーーい
何にせよ目先の恐怖はもっと怖い怪物のお陰で解決した。
というタイミングで、新たな声が出鼻挫かれまくりのビーチに参入する。
あ、ユサさん! 皆さん!! コッチでーす!!
……本当にソッチで合っているのか……? 控え目に言っても綺麗とは言いがたい海なんだが……
そもそも全く報告に上がっていない生物が見えるのですが
わー何それダンベルさん、食べれるタイプですか~? お鍋の具材になるかなぁ
貴方は本当に鍋しか頭にないのですね
ユサさんもっと驚いて!? 新聞部なんだし色々と驚嘆してほしい!! あ、でも記事にするのはクレームもとになるから待ってね!?
注文多いなあ。あ、ダンベルさん言われた通りしれっと様子見ときましたよー。ここ以外、別に変な事件は起きてる感じは無しです。お暇してた知り合いのパパ達に追加の調査はお強請りしときましたけど、取りあえずはこれくらいでいいですかね?
感謝いたします。こういった調査に関しては矢張り一家政婦などよりもそちらの領分ゆえ。武力が必要であるなら、すぐに援護に向かいましょう
武力は家政婦の領分なのかな!? ていうか、えっ何その会話!? 色々と玉席が蚊帳の外になってて不穏過ぎるよお2人!?!?
……侍従、見ての通りだ。アッチの警備を強化するよう言っておけ
承りました。監査官、何か欲しいものはありますか?
賄賂は無用だ、元々話す気も起きない。不確定な情報など混乱しか生まないからな
あざーっすマキさん。そんじゃあ……そろそろ遊ぶかァ!!
……え!? 遊ぶんですか!?
あ、もう1回、海だぁー!! って仕切り直しがてら叫んどく?
仕切り直す!? 今この空気感で仕切り直せるの!?
仕切り直すことになった。
…………えーと……あーもうッいいや考えるのやめる!! 皆さん行きますよ、仕切り直しの、せーのッ
「「「う・み・だーーー!!!(←ヤケクソ)」」」