[1-4]効率って知ってる?
あらすじ
「よーし……見ててユサさん! 私の、画期的な第一歩の瞬間だよ!!」
ココア様、出だしからポンコツぶりを見せつけます。
作った挿絵は極力使い回しまんもすプロローグその4。
スタート!
それから数日後、ココアの戦いの日々が始まった。
家政婦ダンベルが取り寄せた「武器」を携えて……
今日から、ヤンキーの第一歩だーー!!
むしろ優等生になってくださいね
100人中100人が知らない謎検定「レコンキスタエクスプレサー」。
その内容は、普段使われないような言葉表現、または今は使われているがいずれ誰も使わなくなりそうだなと誰もが思うような流行語、そういったものを自身の表現の武器として携える者に与えられる検定資格らしきものである。
思いっ切りざっくりと換言するならば――死語の使い手。
平然と且つスタイリッシュに「えんがちょ」と言ってみせるような、はたまた何の躊躇いもなく自然な流れで「あじゃぱー」と嘆いてみせるような。
そんな誰得ネクロマンサーに与えられることになったラベルなのである!!
ダンベルにも釘を刺されたけど、やっぱり授業が一番大事だよね……よし、放課後に始めるぞっ
そんなレコンキスタ検定の詳細を記した文書が、一般感覚では違法じゃねえかと疑うレベルで高額な申込料を支払っちゃったココアのもとに届いた。
場所を制限されないWebテストであるため試験を受けるタイミングは各自で決定することができ、1回の申込で受験は3回まで認められる。但し、有効期限は申込受領から1年間。
ここでは保護者代わりなダンベルは、即座にココアの受験の自由を奪った。既にⅠ回目の受験日は決められてしまったのである。そして、この3回のチャンスにて合否の決着を付けること、それが2人の間で約束された。全てココアの性格を慮っての先手鞭である。
はい、それではこの問題を――ココア様、如何でしょう?
ふらふらふら~~……
(可愛い、何て可愛らしいのココア様!)
(こんな基礎的な部分ですら躓いてこそココア様!)
(嗚呼、その弱った顔を見ないと1日やっていけないわ!! 何たるオアシスのココア様!)
ダンベルを大いに巻き込んだ。即ち、コレはもはや一個人の暇潰しでは赦されない。
もう一度宣言する。ココアの戦いは、始まったのである――
はぁ……はぁ……いや、そもそもこれまで毎日が戦いだよ私にとって……?
ココアちゃん、次の授業の宿題やったー?
お弁当タイムに授業の話題を出さないでユサさん!! あとユサさん、いつも思うんだけどお鍋はお弁当じゃないと思う!!
黑稜キャンパスの授業をやり過ごし(←瀕死)。
お昼休みは学友とのお弁当タイムで心を癒やし……。
そして午後の授業もそつなくこなし(←即死)。
はぁ……はぁ……――ふふ、遂に、この時がやってきたよ……
そりゃそうだよー、放課後は寝てても勝手にやってくるんだよ
その通り! 案の定今日の授業はコテンパンだったけど、今日の私はこっからが本番なのだ!!
予期していた、放課後の到来。
新たなるココアの一歩。その象徴となる「武器」が彼女の机にドンッと置かれた。
ソレは……漢字辞典?
レコンキスタⅢ種の内容は、難しい漢字表現!! 難しすぎて誰も日常で使いたがらない、事実使いにくい、そんな“難漢字”を扱いこなす表現力が、求められる!
へー……それで、辞書?
ダンベルが用意してくれたんだ。試験範囲からして多分コレが一番大事なテキストになるってね!
へーー(ぱらぱら)
ってちょ!? ユサさん、私より先に開かないでよ! 返して返して!!
格好付けたいココアは慌ててユサから辞書を取り返す。それは余裕で1000ページ超えしている、間違いなくココアの経験上最重量のテキストであった。
それを一瞬ながらパラパラめくってみたユサは、とっっっっても苦い表情をしていた。
……………………
よーし……見ててユサさん! 私の、画期的な第一歩の瞬間だよ!!
もう一度机の真ん中に丁重に辞典をスタンバイさせたココアは、息を再度整える。
資格系の勉強をする、その初めての瞬間の感情を楽しむ。
100人中99人はやらないであろう無駄な儀式を本気でやってるココアが、いよいよ手を、指を伸ばす。
クソ厚い漢字辞典を、開く――
まずは……あ行から、全制覇だーー!! いっそこの辞典の中身全部憶えちゃる!!
何の動機もなく謎にハードルを上げるココア。出だしの「丫」と対峙したココアの数秒後の表情を。
隣で見てるよう言われたユサはとっくに完璧に予測しきっていたのだった――
ココアちゃん、効率って知ってる?