[8-07]お前が作りだした現実だぞ
あらすじ
「――この稜泉は、崩せない!!」
稜泉学園、そのブランドを護り抜け!!
こっからベタにベタを重ねるインサート8の7ページ。
スタート!
――また、悪い癖が出ているな
絶体絶命。
現実的にはただその一言に尽きるココアの窮地に。
苦笑の言葉が背中より刺さった。
――え?
聞き慣れた声。
初めて後ろに意識が引っ張られたココア。
2人はそのポンコツ番長の両隣に並んだ。
君はそうやって平然と闇雲になるトコがある。そこはホント改善しろ
ツララ先輩!?
独りで思い悩んで解答を叩き出したところで所詮はココア、妙案であるわけがないなり。そこをそろそろ自覚すべし
ハコ!?
ココア、流石に動揺。
というか玄武衆にとっても、特に黒い制服を纏った有名な令嬢のご登場には大変な動揺モノだった。
藍澤の令嬢、だと……!
さて、今こちらの伍席が伝えた通りです。学園の無関係者、今すぐ出て行きなさい。そんな醜く小汚い足で神聖な稜泉の土地を踏むこと、愚かな警察達が仮に黙認したとしても我々玉席は決して許可いたしません(←表ver.)
この将来の海賊王イオリッシュ=コンデンエイネン=シザイノホウの牛耳る海域を攻撃するっていうなら、コッチも容赦しないんだぜーー!!!(←表ver.)
な、何て強気なお嬢さんだよ……! もっと箱入りな感じかと思ってたぜ……
こっちの女子は何言ってるのか全く分かんなかったんだが……
更に状況に大波が寄せる。
……何で最高令嬢が最前線に立っているんでしょうかね
……!! ウミナリさん!?
ココア嬢のこと、とやかく言えない愚行をやらかしていること、自認いただきたいものですが
指摘痛み入りますね。しかしよくよく考えたら、この稜泉が暴走族なんて愚かしい連中に下手になっているというのも阿呆らしいでしょう? 侍従、こういう時こそ力を発揮なさい(←表ver.)
まあ、確かにこういう展開は個人的に分かりやすくて好印象ではありますが
いや、普通に醜悪な流れだぞ……
ちょ、マキ先輩まで!?
……後でまた、説教だからなココアくん。――いつまでこの神聖な研磨の舞台にくだらぬ足を着けている!! 参席も言った通りだ、さっさと踵を返し猛省しながら帰るがいい!!
猛省あたりは言ってないんだが
それとも、いっそこの場で投獄される準備でもするか? 裁判の演習に附き合ってもらうのもいいな、お前達の罪状をこの俺が直々に読み上げてやる
ちょっとマキ先輩、あとウミナリさんも何か盛り上がってません!?
こうなれば、もう自棄になるしかないと思っている自分がいるのも確かだな。時には現場の流れに乗るのも処世術もとい戦略だ
ココア嬢。そろそろ後ろを振り返ると良いでしょう
え? ……って、ええぇえッ!?!?
孤軍奮闘だった筈のココア、ここで初めて後ろを振り返ったなら。
そこには台無し感半端ない光景。
「「尊皇攘夷!! 尊皇攘夷!! 尊皇攘夷ッ、コ・コ・ア・様ーーーーッ!!!(←撲滅準備)」」
うーーーん、ここまで正面衝突するつもりはなかったんだけどなー……今からパンツァーファウストとか取りに行った方がいいかな。いや、もうダンベルさん電話したから要らないか
ふ、ファンクラブの皆まで!! ユサさんも、それに――
大多数のココア見知る人達。
白泉生もいれば、人質候補たる黑稜生まで。
ココアの護りたかった稜泉世界が、今この現場にココアと共に在った。
参席が先導されているというのに、それに追従できないようではグループの名が廃るからな……
参席を護らなくては!! というか参席、流石に最前線はおやめください!!
私の身は私が護るのでご心配なく。自分のことだけ考えて結構です、今から踵を返すのも恥ではないですよ
それはブランド云々以前に恥ずかしいことこの上ありませんから!! ……そういうことですので、普段血気盛んなのだから力を発揮なさい、ドキさん!!
ハッ、そっちこそ、闘争は慣れてるんでしょリケンさん!! いーじゃん、こういう力の合わせ方は嫌いじゃないよ、附き合ってあげる!!
オレッチの仲間達ッ、今こそ普段の結束の力を振り絞るんだぜーーー!!!
海賊王の仲間になった覚え皆無だけど、こういう時はホント頼もしいぜ!! 俺達の結束の力ってやつ、試してみるか!!
ベタベタだねぇ、でも嫌いじゃねーよ!! たとえ黑稜が一緒でもな!!
でも無理は禁物だからね! リザくんも、いざという時は私が護ってあげるんだから!!
…………
(適度に仕事をしなさい、いいですか適度ですよ、目立ったら後で殴りますからね)
(そんな凝視してこなくても分かってますよ、ワガママお嬢様)
「「ココア様ぁーーー!!!」」
み、皆……どうして!! こんな超危ないところに来ちゃって!!
そういうの、ブーメラン、って言うのですよね! ココア様、ご自愛なさいませ!!
ココア様がノーウェイトでグラウンド出て行ったのを見て……恐怖は気にならなくなりました。ココア様の凄さ、改めて思い知りましたよ!!
ココア様は、私達を護ってくれた。だったら――私だって、ココア様を護ります!! でなければココア様の学友というブランドが廃りますわ!!
……皆……
揃って阿呆なことだな全く。しかしながらこれは、お前が作りだした現実だぞ
武力でいえば完全にあちらに軍配。
だがそれとは別次元で、この状況はあんまり皆、脅威とは感じていなかった。
ここに1つの事実が立つ。
――この稜泉は、崩せない!!
はい!!
くく……クククッ……――!!!
ちょっとヨゴレの兄貴!! 楽しんでないで作戦をッ!!
あまりに変わりまくる光景。まだグラウンドもそこまで進軍してないのに、勝手に少年少女が集まって騒ぎ出している現実に、幹部の男性は楽しそうに笑っていた。
……ああもう、計画狂いっぱなし。たまにはこういう大失敗も刺激に取り入れなきゃ、ビジネスは廃る。稜泉って思った以上に面白いところだねぇ――
ヨゴレの兄貴ィ!! アタシ、そろそろ限界!! コイツら――この玄武衆を前に、舐め腐りやがって!!! ぶちのめす……現実ってやつを刻んでやる!!!
そう喚くなやシュモクちゃん。結果的に、餌がこうも沢山集まって来てくれた、状況としてはえらく改善された方さ。しかも藍澤の令嬢まで来てくれて……
つまり、ボーナスタイムってことすね!! 全員やっちゃいます!?
そこなんだよね、問題は。何事も過剰摂取は良くない。持ち腐れは組織の未来に腐食を及ぼす――さあ、増えすぎた選択肢、何処までがセーフだ? 何処からがアウトだ? 時間はそう多くない、考えろ――
ヤバい状況であることに、変わりは無い。
特に黑稜生が多く集まってしまっているのは玄武衆からして絶好の機会。作戦が確立されたならば……。
開戦はもうすぐそこ。その極まる緊張感の中で。
…………
…………
頭領はただただ、この現実を作りだした不動のクソダサ特攻服ピンク髪ヤンキーを見詰めていた。