[8-02]これまた幼女かよ！

――とある休日。

もう少し具体的にすると、試験が明けてそう日の経たない休日。

水上区の見慣れたモールに２人の姿があった。

身長差が30cmに届きそうなカップルが半分楽しそう半分面倒くさそうにまかり通っていた。

デートらしいのである。

休日家政婦、休日なので思いっ切り嘆きを外に漏らす。

ちなみに休日な上に外出ということでいつもの家政婦コスチュームではないダンベル。かといって今は動きやすいジャージスタイルというわけでもなかった。

ダンベルは機能性重視だった。

従順でストイックな家政婦の将来を心配しつつも、恋人繋ぎをキープしながら身長差に挑み続けるココアは素晴らしい休日に笑っていた。

ダンベルは素直に嫌がった。結構珍しい態度である。

ダンベルが露骨に嘆くたび、ココアは喜ぶ。

これだからダンベルは休日が苦手なのである。

そんなお困り家政婦を振り回しつつ、ココアは水上の見慣れた道を進んでいく――

ユサさんのバイト場所まであと少し。

そんな地点で、ココアはある光景を目にした。

明らかにガラの悪いお兄さんが、自分よりちっちゃいピンク髪の女の子を囲んでいるという大変よろしくない惨状であった。

女の子は泣き出す寸前である。

ココア、ダンベルの腕を離れて直行。迷いゼロである。

無理矢理怖いお兄さん達の隙間を空けて、女の子抱えて脱出させる。

勇猛果敢、ココアは明らかに勝てそうにない筋肉量のお兄さん達を前に、子どもを庇って立ち塞がる。

もちろんこっから先、自衛の手段含めてノープランである。

獰猛な気配を隠さない図体の男達が、対してスマート・インテリの気配を漂わせる静かな男性に顔を向けた。

……彼はずっと、いきなり割って入ってきた女子のことを見詰めていた。

だいぶヤバい状況だけどもっとヤバい人がバックに附いていた。

するとココアが次にするアクションは、より広範を守ること、である。

男達は黙った。

そして早歩きで既に注目されつつあった現場から立ち去っていく。

……そのうちの１人。

インテリ上司は笑顔を見せて挨拶を残していった。

……………………。