[8-02]これまた幼女かよ!
あらすじ
「今のところ危害を加えるつもりはないから安心してね。うちら、見ての通りやる気ゼロだから」
ココア様、またデート回。
最近オフィカジュのお兄さん観察するのにハマってますインサート8その2節。
スタート!
――とある休日。
もう少し具体的にすると、試験が明けてそう日の経たない休日。
水上区の見慣れたモールに2人の姿があった。

ほらほらダンベルー、一緒に歩こうよー

私はいわば侍従の身ですよ、主の少し後ろを歩くのが標準スタイルと認識くださいませ

デートなんだから例外スタイルでお願いしまーす!(←恋人繋ぎ)
身長差が30cmに届きそうなカップルが半分楽しそう半分面倒くさそうにまかり通っていた。
デートらしいのである。

もーう、だいぶ前にはなるけど約束してたでしょー。このへっぽこ学力の私が平均点とれたら一緒にお休み楽しもうって!

ええ、かなり前の話題でしたので完全に隅っこに追いやってはいましたが、憶えていますよ。だからこうしてココア様の休日に適応しているのではないですか

明らかに適応しきれてない表情……
休日家政婦、休日なので思いっ切り嘆きを外に漏らす。
ちなみに休日な上に外出ということでいつもの家政婦コスチュームではないダンベル。かといって今は動きやすいジャージスタイルというわけでもなかった。


……それにしても。スーツやオフィスカジュアルを除けば、巷間ではかような服装が標準とされているのですか? 動けないとまでは言いませんが、これでは壁を伝うのにいくらか支障がありそうなものですが

世間一般では壁を走る必要性とか考えもしないから大丈夫だよ。これを機に若くて美人な女性のダンベルにも最低限の着こなしっていう文化を覚えてもらおう……

全く以て、生産性を感じない研修なことですね

研修じゃなくてデート!
ダンベルは機能性重視だった。
従順でストイックな家政婦の将来を心配しつつも、恋人繋ぎをキープしながら身長差に挑み続けるココアは素晴らしい休日に笑っていた。

えへへ。やっぱりダンベルは、綺麗だなぁ

生産性の無いお世辞は聞き飽きたのが正直なところですね

事実だもーん。おまけにカッコいい女性、出来る女、そういうオーラがダダ漏れだから、スカートよりはパンツだよね。うんうん、将来は私もこんな感じのヤンキーになりたい

私はヤンキーであるつもり皆無なのですけどね

よーし、折角ここまで来たんだし、ユサさんのバイトしてるスイーツカフェに寄ろう! 休日ダンベルを見てもらうんだー! ふふーん

げっ、はぁ? 正気ですか??

そんな露骨に嫌がらなくても……
ダンベルは素直に嫌がった。結構珍しい態度である。

ユサさんと何だかんだ、仲良いでしょ? バイト中だからあんまり迷惑にならないようするけど、このダンベルを独り占めするのは何だか勿体ない!

……学内新聞に載せられたらどうするんですか

お、ダンベルがもしかして恥ずかしがってる? これまたレアだ

予測不能な相手ではありますから、必要の無い情報を無条件で明け渡すようで、戸惑いを隠せないのは事実ですね

えへへ、困り顔のダンベルも、滅多に見れないなぁ。そうやっていっぱい毎日表情見せてくれたらいいのに

褒められた願望ではありませんね。というか貴方に困らされるのは珍しくはない筈ですが
ダンベルが露骨に嘆くたび、ココアは喜ぶ。
これだからダンベルは休日が苦手なのである。
そんなお困り家政婦を振り回しつつ、ココアは水上の見慣れた道を進んでいく――

……ん?
ユサさんのバイト場所まであと少し。
そんな地点で、ココアはある光景を目にした。

あー……めんどくせえな、ほんとに頭領はこんなガキを探してんのかぁ? 何で俺いまこんな変態じみた営業やってんだよ……兄貴ぃ

嘆くな嘆くな
明らかにガラの悪いお兄さんが、自分よりちっちゃいピンク髪の女の子を囲んでいるという大変よろしくない惨状であった。
女の子は泣き出す寸前である。

え、ちょっとぉおおおおお……!!?

あ
ココア、ダンベルの腕を離れて直行。迷いゼロである。
無理矢理怖いお兄さん達の隙間を空けて、女の子抱えて脱出させる。

……?

このご時世だと一瞬で捕まりますからぁ!! ほら、めっちゃ泣きそうだったでしょ!!

!? 何だテメエ、これまた幼女かよ! 俺らは保育士じゃねえんだぞ……

園児じゃないですけどぉおおお!? とにかく、やめてあげてください!!

…………
勇猛果敢、ココアは明らかに勝てそうにない筋肉量のお兄さん達を前に、子どもを庇って立ち塞がる。
もちろんこっから先、自衛の手段含めてノープランである。

チッ……あのなぁ、俺らだって好きでやってんじゃ……って、お前もよく見たら――

え?

――ヨゴレの兄貴!!

…………
獰猛な気配を隠さない図体の男達が、対してスマート・インテリの気配を漂わせる静かな男性に顔を向けた。
……彼はずっと、いきなり割って入ってきた女子のことを見詰めていた。

えっと……あのー

ああ、ごめんね。一応言っておくと、今のところ危害を加えるつもりはないから安心してね。うちら、見ての通りやる気ゼロだから

????

えっ、兄貴!? でもそれだと頭領――

やむを得ない状況ってのはあるもんさ。よく見ろ、彼処に立ってるお嬢さん

こんにちはぁ(←準備体操死神)

軽く人生の終わりを感じさせるよねぇ
だいぶヤバい状況だけどもっとヤバい人がバックに附いていた。
するとココアが次にするアクションは、より広範を守ること、である。

あ、あの。お察しの通りあの人ヤバいのでッ!! 何にせよ逃げた方が……!!

勝手に出しゃばって来て何なんだおめーらは!!

折角のご忠告だ。聞き入れて踵を返すが吉かね

ちょ、兄貴!!

――俺の言うこと、信頼できない?
男達は黙った。
そして早歩きで既に注目されつつあった現場から立ち去っていく。
……そのうちの1人。

じゃあ……またね

…………
インテリ上司は笑顔を見せて挨拶を残していった。
……………………。

(……あれ? あの人……どっかで――)