[6-07]全く仕方ないココアくんだぁ
あらすじ
「タマ先輩美味しい~、なんちゃって」
フォロー伍席は伊達じゃない、そんな回。
中華料理店の回転テーブルでスマホアプリ式ロシアンルーレットパーティーをしたら案の定どちゃくそ怒られた6話7節。反省してます…。
スタート!
かれこれ過ごして、何とかお昼時。
2組はカフェ店を訪れていた。勿論テーブルは別である。
 
    はぁ~~……(←疲労)
 
    フォローを積み重ねている割には、未だ会話すら発生していないのはどういうことですか?
 
    でもまあ、失敗らしい失敗はしてないので、良好ですよ……
消耗の激しいココア、真後ろのテーブルの2人を想う。
……公園を出てからも散歩しつつ色んなモノを見たり触れたり……客観的にはもどかしい結果でしかないかもしれないが、背伸びしないと決めている今回の作戦は割と忠実に進んでいた。
この調子が続けば、今日は成功といって良いのである。
 
    といっても、一緒にランチは結構冒険なんだよなー……
 
    嫌いな相手と向かい合って食事など罰ゲームでしかありません
 
    私凝視しながら言わないで……。いや、それもあるかもですけど、ツララ先輩の場合はタマ先輩のお食事姿がレアなんですよ。いっつも10秒飯だから
 
    ……? つまり?
 
    タマ先輩のリアル食事シーンにツララ先輩の血管が耐えられるかどうか……一応強く警告はしておきましたけど、身体は嘘つけないですしね
 
    もうアレルギーってことでいいのでは? 遠ざけるべきでは??
デートとしては当たり障りなさそうな適度にオシャレなお店の、適度にオシャレなランチがメニュー表に並ぶ。
流石にカップル専用とかいう鼻血不可避の大皿は回避して、普通のやつをオーダー。
 
    ……これで、いいですか?(←表ver.)
 
    は、はい。あ、オーダーは私が――
 
    ……事務的ですね。何がデートですかくだらない(←窶れてる)
 
    いや、これめちゃ素晴らしい一歩ですよ! 仕事じゃないところでコミュニケーションが成立したのいつ以来だろう……!!
 
    コレすら快挙とは
疲れつつもオーダー済ませつつも、ココアは感心していた。
ユラが変態挙動をセーブしていればタマとこういう時間も過ごせるんだな、と。
 
    これからの方針も見えてきた気がする……。やっぱりツララ先輩がドン引きパフォーマンスやってるからいけないんだよね。ツララ先輩が普通にしていれば、いつかタマ先輩も警戒を解いてくれる、そんな気がする――
 
    おまたせしました、シャレオツナポリタンをお頼みのお客さ、まあぁああアアアア――!?!?
 
    ――え?
――このとき、ココアはうっかり失念をしていた。
ぶっ飛んでるのはツララ先輩のストーカー癖だけではないことを。
 
    ひゃあぁああ!?!?
 
    アァアアアアお客様ぁああああ――!?!?
 
    ッ!?
 
    「「!?!?」」
お店でナポリタンを頭から被ることぐらい朝飯前なほどに弐席は運に恵まれないということを――!!
 
    (タマ先輩ぃいいいい――!? そ、そうだった……日頃の惨状からして、原因はツララ先輩だけじゃないんだ!! 迂闊だった!!)
 
    申し訳ありませんお客様ーー!?
 
    え!? あ!! こちらこそ!? ご、ごめんなさいありがとうございます!?(←パニック)
明らかに被害者なタマは逆にウェイトレスの心配をし出し、隣のタマくん大好き女子は当然このウェイトレスに殺意全開の顔を向けて。
ついでに他のお客から注目を浴びだして、恐れた明らかな失敗を、今すぐこの場から走り去りたいウミナリ侍従は確信する――
その時。
 
    あはは、タマ先輩ったら今日も厄日なんだから~
女神の一手が、君臨する。
 
    ……え?
 
    むぐむぐむぐ……うん、美味しい! タマ先輩美味しい~、なんちゃって。えへへ、取りあえずバスタオル持ってたのでツララ先輩ッ拭いてあげてください!
 
    !? お、おう
頭上に乗っかったままだったアツアツのナポリタンを一口。それからプールとか考えてないデートにはまず要らないサイズの水で濡らしたバスタオルをユラに押し付ける。
なおこの時には既に別のバスタオルでタマにぶちかまされた汚れ等を拭き取った後。なのでユラの仕事量は大したことにはならないのだが……
 
    あ、あ、ああの、参席――!?
 
    (た、タマくんの身体を、私が拭いている……や、ヤバいぞ、鼻血祭りが前夜祭だぁああ……!?)
 
    ……これもある意味、想い出かな? タマ先輩には悪いけど……パシャッ
 
    え!??
さらに伍席は仕掛ける。
不運なタマと、それを拭うユラ。2人の大波乱な姿を携帯で撮影したのである。
 
    えへへ、ツララ先輩やユサさんの真似~。といっても私は悪質な使い方はしませんから安心してくださいねタマ先輩
 
    あ……はい……?(←パニック)
 
    ……でも、一応4人で来てるんだし、私達も入りたいな。あ、すみません!
 
    はい!!(←パニック)
 
    よろしければ、ちょっと撮影を……
場を完全に支配していたココア、ウェイトレスさんに携帯を押し付けてまさかの記念写真の文脈に持って行く。
ウミナリも含めて全員大混乱、周りのお客も意味不明な展開。
ただ、それ故に単純明快なものほど先行して理解される――
 
    と……撮りました……
 
 
    えへへ――ありがとうございました!!(←全力笑顔)
 
    「「「(この子、どんだけ天使なの???)」」」
キラキラ純度100%の笑顔をばら撒く花畑少女の明るい雰囲気が、パスタの悲劇あたりから総じて気まずくなっていた店内の空気をほんわか中和させていく。
……主にタマや散らかっちゃった料理の片付けが済んだタイミングで、更にココアは強引にウェイトレスさんと一緒に厨房の方に突撃していった。
…………数分。
 
    タマ先輩~、お詫び的なもの貰っちゃいました~。取りあえずコレ食べてください~
 
    ……あ、ありがとうココアちゃん
戻ってきたココアがタマに謝罪料理をお渡ししたところで、一連のフォローアクションは終了となった。
店内、拍手喝采を思わせる熱い視線とジェスチャーで包まれる。ただし終わったことなので蒸し返すのは無粋。静かにココアを絶賛するお客達である。
その気配に応じて、「騒がしくしちゃってごめんなさい」の意味を籠めた軽い会釈と苦笑を幾つかばら撒いたところで、一旦自分のテーブルに着く。
 
    ……………………
ウミナリ侍従にのみ、今のココアの素の感情が露見していた。
 
    ……厨房に突撃して何をやってたんですか?
 
    ウェイトレスさんはタマ先輩の災禍っぷりに巻き込まれた被害者とも言えるから、その辺を責任者さんに納得してもらいに言ってました……謝り倒して、記念写真に付き合わせたことも謝罪して、プラスこれにて今回のことは完全にクローズドしてもらおうってお願いを……逆に謝り倒されたけど……
 
    あのウェイトレスにまでフォロー入れたんですか
 
    うぅ……これくらいの立ち回りは毎日やってるから何とかやれたけど、心臓止まるかと思った……もうお家帰りたい……
 
    帰りたいのは私なんですが
 
    あ、タマ先輩ツララ先輩、状況が状況ですしたまには4人一緒に過ごしましょー(←テーブルくっつけてフォロー)
 
    う、うむ。まぁ仕方ないな。全く仕方ないココアくんだぁ(←パニック)
 
    もう、ココアちゃんはしゃぎすぎだよー……??(←パニック)
 
    …………
――これが伍席の専売特許スキルか。
ウミナリは彼女もまた玉席であることを思い知ったのだった。
