[6-05]折角の休日
あらすじ
「耐え忍んでこの時間、背骨の髄まで染みこむくらい浸らせてもらうさ」
いよいよ始まるはた迷惑極まりないデート回。
友達が夜景デートしているその頃、作者はコレを書いてます憎しみの6話5節。
スタート!
――本日、日曜日。
それも、少なくとも1人の少女にとって歴史に残るであろう1日が。
多くの周りの人間の胃腸を乱しつつも、始まる――
……ふむ。お日柄も良し。まるで私のステップバイステップを空も祝福しているかのようです(←意味不明)
これはいつもの黑稜や玉席と全く関係のない私的時間。
私服をまとい、ありのままの自分を曝け出す回である。
では……今日はよろしくお願いします
…………?
た――タマ、くん
……???
そのお相手は勿論彼女である。
相変わらずの黒パーカー装備で氷条参席と上野区に集まった弐席は見るからに動揺というか混乱していた。
???????(←理解不能)
ガッチガチであった。それ以前に現実を受け止めきれていなかった。
ブレンドレス弐席にとって、休日に稜泉と全く関係無い文脈でかの参席と上野区を歩く状況になっているのが理解できずにいた。
要するに現状、不本意なのである。
(ど、どうしてこんなことに――!? 何かココアちゃんに呼び出しを貰って、4人で散歩するとかのんびり過ごしましょうとか説明されて……参席までいらっしゃるの言ってたかなぁ……!?)
(ココアくんには隙を見せるんだなぁ。いやぁそんなタマくんも趣深い……)
(もしかしてコレはココアちゃんの何らかの企画……? ど、どうしてこんなさりげなく稜泉生活最大級の危機を持ってくるの……!? 意図は!?)
(ああ混乱してるタマくん可愛い、あと今更だけど私服めんこいぃぃぃ――)
一向に会話しないまま個人個人で盛り上がって進まない散歩。
氷条参席にいたっては鼻血でも出しそうな顔つきをし出したので、後頭部に注意の意味合いの輪ゴムが飛んできた。
ッ……!
ツララ先輩、鼻血はセーブですよ!! 分かってますよねッ!!(←小声)
お、おう……!! 大丈夫、氷条の姫として周りを騙し通してきた経験は今日この時の為にあったんだ、耐え忍んでこの時間、背骨の髄まで染みこむくらい浸らせてもらうさ(←小声)
気持ち悪い心構え耳打ちしないでください……! えっと……じ、じゃあ何だかんだでタマ先輩とツララ先輩がペアってことで確定してるので、取りあえずお2人で、テキトウに歩いてくださいよ! 折角の休日だから楽しく、ね!!
折角の休日……
(ごめんなさいタマ先輩の折角の休日を……ッ)
良心が盛大に痛みながらも、本日の要たるフォロー伍席が背中を押す。
多少疑問があっても、強引な相手には従う。それがタマの性格であることをココアは理解していた。オマケに畏怖すべき氷条参席がこの文脈に従っているということが、正解を考えるための無視しがたい判断材料。
当然納得はしきれてないものの、タマは忍ぶ道を選ぶ。参席の横を歩き……ココア達はそれと少し距離を作って後追う。
ようやくWデートが開始された。といっても事実はユラとタマの強制デート。それをサポートする後方2人。ちなみにココアの相方は彼女である。
……………………
休日出動侍従、日曜日デートとは思えない眥裂髪指寸前の不機嫌っぷりであった。
形・設定でしかないとはいえ本日彼女はお花畑ブレイン伍席のデート相手なのである。
あの……ウミナリさんも、本日はよろしくお願いします……後日埋め合わせしますので……
……貴方の心臓でも埋められるか疑問なほど大きな貸しであることを理解しなさい……(←ギガンティック不機嫌)
は、はい。死ぬほど感謝してます……
代償は高くついた。
そういう意味でもコレは負けられない戦いである。
先日打ち合わせた通り、本日の目的は地道ながらも2人が事務的でないコミュニケーションを交わすことである。
……これだけお膳立てしなければ仲を進展させることができないならば元々相性はアレでしょう、放置しておけばよいものを……(←ルナティック不機嫌)
あはは……まあそれも分からなくもないんですけどね
そもそも、後方はあの2人の行程を支援する役割でしょう。その程度であるなら、私を引き出す必要性はない気がするのですが(←シャイニング不機嫌)
ツララ先輩に近くて、タマ先輩との状況を把握しておいた方がよさそうな人っていったら侍従かなって。お父さんにも報告しなきゃいけないでしょうし、その材料にしてもらえれば……
こんな何もかも狂ったイベントをどう報告しろと?
ココアは当然のこと、ウミナリの精神も結構削られていた。
そんなスタート地点で楽しくなりそうか不安しかないWデートの舵は切られた――