[3-04]いつでも踏み殺せる虫で
あらすじ
「現状、我が主の背負うブランドと貴方の振り回しているブランドとは何の協力関係も結んでいません。すなわち、敵対勢力です」
ウミナリ侍従、見事なスタートダッシュ。
言っときますがツララ先輩もウミナリさんも美人枠です4節ゥ。
スタート!
今日の口臭キツくないですか? ドブでも飲んできたのかと思いました(←臨戦態勢)
君こそTHE・雑菌の巣窟みたいな口臭してるけどキーボードでもペロペロ舐めてきたのか? 健康に悪いぞ(←臨戦態勢)
ちょ、いきなり生徒会室入ってきて何なんですかぁ!?
ノックもなく入ってきたと思ったらいきなり拳を握り喧嘩を始めた主従関係の2人に、漢字のお勉強に勤しんでいたココアは完全に集中力を破壊された。
こんのッ、今日もクソ絶妙なタイミングで邪魔しやがってこのウ☆コ侍従がッ(←喧嘩中)
阻止したと解釈くださいこの鼻血女(←喧嘩中)
やめて、やーめーてー!! ここでケンカしないで!!
うるさいなり騒ぎたいなら余所でやりなさい
ふぅ……余所じゃ出来るわけがないから、此処に移動してきたんだが。本当、此処は良いストレス発散場だな
生徒会室ですっ。ケンカの場所じゃないので!! ウミナリさんも侍従なんですから、ツララ先輩に突っかからないようにしましょうよ
何故貴方にそんなことを指示されなければいけないのですか。そんな道理は現在ありません、よって口を閉じることを推奨しましょう
怖い怖い怖い怖い怖い……!
カースト無視してて良いんですかこの侍従は
ココアくんなら仮に噛みついても誰にも見てなければセーフだと判断してるんだろう。全くそんなんだからコイツにすら舐められるんだぞ
うぅ、主従揃って私をバカにしてきてる……というか今回は何が切欠でケンカしてたんですか?
空気を察知しただけです。この、男嫌いであることを利用して攻撃されそうになっていた我が主が、ソレを理由に無関係者への過剰鉄鎚の流れを作っていたので
阿呆な君には気付かなかったろうが無関係ではなかったんだよ。それに仮にそうだったとしても潰せる奴は潰しておいて損無いだろ
話聞く限りウミナリさんファインプレーって感じですね! 流石侍従!!
拳を握るのは侍従としてどうかと思いますが
貴方がたの言葉など必要としていません。よって無駄に此方へ口を開けないでもらいたいですね
………………(←傷付く)
ハコ大丈夫だよ、冗談で言ってるだけだから真に受けないで! ウミナリさん、もうちょっと優しく接してくれたら私達嬉しいです……
何故ソレを受諾する義理があるのですか?
既にお察しだと思うが、このウミナリという侍従は侍従らしくはないのである。
玉席であり、それ以前に相当の令嬢であるココアにさえ言葉は鋭く吐き出される。
現状、我が主の背負うブランドと貴方の振り回しているブランドとは何の協力関係も結んでいません。すなわち、敵対勢力です
えっ、そうなんですか!?
というか現玉席は全員敵でしょう
そうなんですかぁ!!?
ウミナリ侍従、主よりも先にその辺の椅子に着席。
そんなことすら思慮の外だったのですか。とても我が主と同等に近いブランドの令嬢とは思えませんね、まあ知っていたのでさほど驚きもしませんが
そろそろ私も泣きますよ……真に受けますよ……?
全て真の言葉です。当たり前でしょう、何と言っても――
ウミナリ侍従、立ってる主を親指で指差す。
――少し前までは百歩譲れば令嬢らしい令嬢だった我が主に変態発作を埋め込んだ集団なのですから
第2回戦やる?(←臨戦態勢)
お望みとあらば?(←臨戦態勢)
しないしないしない!! いや、ツララ先輩は確かに明らかにこの場所で開いちゃいけない世界開いちゃいましたけど、多分あの頃よりも良い感じの先輩になってますし――
それは貴方の花畑脳で導き出している何の説得力もない心的結論でしょう。表であの姿を見せれば、1発アウト、最上層から大転落。爆弾を抱える羽目になった事をどう好意的に解釈しろと? あと人道的にもアレでしょう
言い返せないなり
確かにッ、ツララ先輩のストーカー癖はお昼のニュースで面白おかしく叩かれそうだけどもぉぉ……!
私は今まで封じてきた欲望に忠実に、いわばご褒美感覚でタマくんとコミュニケーションを取っているだけだ
盗撮盗聴をコミュニケーションと言い切りましたか
……そして、例のバ会長は何を企んでいるのか予測もつかず、海賊王会計も悪名高く読みづらい相手
悪名なんて付いてません将来の海賊王として広報活動に取り組んでいるだけです
副会長はたびたび騒ぎの渦中となっており、ついでに書記は悪質なストーカー
タマくんの周りで勝手にバカ共が騒いでるだけだし、あと私をついで扱いするんじゃないクソ侍従
そんなワケで、玉席はどいつもこいつもタチが悪いのですよ。あの監査官も内情を知っているにも関わらず観察に留めている始末……我が主を求婚対象に入れているというのに。はぁ……
ウミナリはしっかりと自分の感情を言い切った。ため息付きである。
……あの、ウミナリさん? ちなみに私は……
は?
私も玉席ですけど、何かコメントとか無いんですか?
……別に。無能で無思考で無行動、つまり無害でただただ敵でしかないというコメントしか思いつきません
はい泣きまーーす!!
ココアは結局耐久しきれずシクシク。
令嬢を泣かせたが、そんなのも気にせずウミナリは忍ばせていた炭酸の缶ジュースの蓋を開けて豪快に喉へと通す。
しくしくしく
げっぷ
悲しみくれる少女へ、無慈悲なゲップ音をプレゼント。
もうお察しだと思うが、侍従とか以前にウミナリは全然褒められた女子ではないのである。
主が主なら侍従も侍従……
一緒に括るんじゃない虫唾が走る。ココアくんもそんな奴に泣かされてないで、漢字の勉強でもやっていろ。その方が圧倒的に有意義だ
うう、ソッチが乱入してきたくせに……でも頑張ろう、ウミナリさんに評価されるくらい強いヤンキーになるために……!! [け]の四字熟語スタートだ……!!
そんなたいそう解せない未来はありもしないでしょうが、まぁそうやっていてくれれば私の思考も少なく済むでしょう
え? 否定はしないってことは応援してくれるってことですか?
ええ、陰ながら。いつまでもどうぞ、無駄なことに尽くしていてください。いつでも踏み殺せる虫でいてください――我が主のために
涙が溜まって漢字がよく見えないや……
……ということで。
こんな性格のウミナリ侍従が応援してくれることが分かったのだった。