[3-05]ゲリラ豪雨的な音

あらすじ

「(誰かのお腹が、鳴ったのかな――?)」

ココア様と学生代表たちの、ある日の戦いの記録。

以前のユサさんバイト回よりも価値の無い大掛かりなエピソードの開幕、5節です。

スタート!

――これは、ある日の特別代表者会議の光景である。

白泉男子

だから、黑稜の団体は無駄遣いを控えるようすれば活動費に困ってる団体に回せるようになるだろう。何度説明させるんだ

黑稜女子

そちらも、費用を工面するに値しない団体に活動費を分けてあげる理由がないと何度我々に説明させるおつもりですか?

黑稜女子

そもそも黑稜学生の活動に無駄があると勝手に認識されているのも癪ですわ。これだから白泉は――

白泉女子

それ完全にコッチのセリフだからッ、勝手に知りもしない団体のこと白泉だからって理由で価値ゼロって決めつけないでくれない!?

黑稜男子

と、さっきから一向に話が進まないが、こういう時こそ玉席の方々に腕を振るってもらいたいのですが

白泉男子

おいこんのバ会長、何とか言ってやってくれよ!

バ会長

これも再三注意してっけど、取りあえず落ち着いてくんない?

ユサ

賑やかだなぁー

ココア

ユサさん他人事決め込まないで……

基本的に玉席が学生と話し合う場は団体長会議であるのだが、たまに団体の代表者と固定せずに一定のルールのもと抽出された学生十数名との会合の機会を作ることがある。

それが特別代表者会議であり、有識者会議とも称されることもある。が、結局やることや雰囲気は団体長会議とほぼ同じであり、玉席が嫌がるイベントなのも同じ。

黒と白でケンカされ、その矛先を自分たちに向けられて、決まった事にも文句を沢山言われて……ということでココア達はとにかく無難に時間を過ごしたかった。

ココア

(特に現状を変えるようなネタがあるわけじゃないし、この会議で得られるものは何も無いよね……)

ならば、もうストレス発散として好きなように言わせてあげるのが一番意義のある時間になる。それが玉席の共通認識。

他人の譲らない口喧嘩をただ眺めているだけの会議なのである。

黑稜男子

大体、白泉のカリキュラムは予算を要しすぎではありませんか? 学生1人ひとりの希望に合わせて学習環境や専門講師との繋がりを用意するなど、学園の経営として非効率で頭が悪い

黑稜女子

同意ですわ! 学びたい事があるならば、その意欲が本物であるならば各々自ずから学ぶアクションを取る筈。それを学校任せにする形を取っているのだから、白泉の学生は総じて鈍間ですのよ

白泉女子

アンタ達はそりゃ学びたいと思えばすぐ実現できるんでしょうよ! 金持ちで顔が利くんだからね!! 学力は高いんだろうけど常識が無いんだもん、面白いよね!

黑稜女子

何ですって――

白泉女子

何よ――

睨み合う双方。比較的大きな火花が散ろうとしていた。

その時。

???

「「「ぎゅるるるるるるるるるおぉおおおおおおお――」」」

その音は、鳴り響いた。

ユサ

……………………

ココア

……え……?

それはもう、最早エコーがかかってるってレベルで見事なグルグル音だった。

そんなわけで時が止まった。

ほぼ思考停止していたココアにとって、これは自分の予測の外の展開である。

ココア

(誰かのお腹が、鳴ったのかな――?)

放課後。人によっては小腹が空いてもまぁ不思議じゃない時間帯ではある。

だがそういう個人的な音は、社会の場において鳴り響かすものではない。暗黙のマナーである。

それをよりにもよって、この会議の場で誰かが破った。それが玉席にとって、緊急性の高い思考を呼び覚ます。

黑稜女子

だ……誰ですのおおぉおおおおお!?!?

黑稜女子

稜泉学園の学生生活の品質向上という大義の為に開かれているこの議会の場で、このような……賤しい音を遠慮無く立てるだなんて、赦し難い無礼者よ!!

白泉女子

ちょっと、何でコッチ向いて怒ってるわけ!! 白泉だって決めつけるのやめてくんない!?

白泉男子

そうだ!! そういうお前らこそ、常識無いんだから何しても赦されるとか思ってそうだよなぁ!?

ココア

ちょ、あの、落ち着いてください……! たぶん生理現象ですから、時間帯的に小腹空きますって、鳴っちゃったものは仕方ないですって……ね?

黑稜女子

ああ、ココア様はお優しい……ですがこういう些細と思っているかもしれない事から躾けなければ人は徐々に腐りを拡げてしまうこともあるのですよ?

白泉男子

てゆーか……もしかして玉席さんが犯人だったりする? さっきからどいつもこいつも黙りこくってるけど

ココア

――!!??

そう、この展開である。

コレがココア達の恐れていたイレギュラーの流れ。真実がどうであれ、それがどれだけどうでもいいことであれ、非難の切欠を与えてしまう事……会議において特に不都合な事態である。

ココア

いや、あははそんなことはっ、ねえ皆?

ハコ

当たり、前だぜ……

ユラ

…………

バ会長

へっ…こちとら直前にラーメン食って準備万端だっつーの

黑稜男子

ふんっ、口ではどうとでも言えるな、だが舌戦激論を繰り広げていた会議の空間を壊してしまった事はしっかり本人に詫びてもらいたい

黑稜女子

ええ、そうですね。私も同意です。どうせ白泉のどなたかと検討ついておりますが

白泉女子

はっ、どうせ本気で来てないんでしょ、だから腹の音もつい鳴っちゃうんだよ。黑稜の品格を傷つけちゃうんじゃないの?

黑稜女子

……好き勝手口走る、本当に品格のない女子なのですね。ドキさん?

白泉女子

毎日優雅優雅言ってる割には、こんなことでキレちゃってさぁ、自分が思ってるほど違う世界の住人とかじゃないんじゃないのリケンさん?

黑稜女子

良いでしょう、白黒ハッキリと付けましょう!!

白泉女子

会議を壊したのは誰か!!

2人

「「名乗り上げなさい!!」」

ココア

……………………

ココア

(やべえぇえええええええええ――!!!)

ココア、いちはやく犯人を悟る。

ココア

(どう見てもツララ先輩だぁあああ……!! どうする、これどうするの!? 玉席っていうのもだしツララ先輩の立ち位置ってのもだしッ)

ユラ

ふーー……ふーー……

ココア

(ていうか呼吸が非日常的ッ!! アレって、お腹空いたとかじゃなくて、ゲリラ豪雨的な音だったの……? だとしたら、色んな意味で速やかに対処してあげないと取り返しのつかない事になる!!)

ココア、深呼吸を挟む。

今この時、玉席、主にユラが最大の危機を迎えた。それを超えるための、自分の最大の思考を準備する!

ココア

(ツララ先輩のブランドを、守り抜かないと――!!)

玉席最大の良心的フォロワー、ココアの死闘が始まった――