[6-06]帰っていいですか?
あらすじ
「無礼千万。ふふ……多少躾けをしてやりましょう」
萌えコンテンツ常套手段を投下します。
ちなみに作者はゲームの中で子猫を3匹飼ってます6話6節。
スタート!
デート開始! ……開始っていっても、特に何かやるつもりはないですけど
デートなのでは?
だって何かやったらどうせ失敗しますもん!
デートなのでは??
デートと表現するのはあくまで氷条参席の心境を尊重してのことである。いってしまえば主のプライドの為だけに侍従は休日出勤させられたようなものだが、実際に言うと殺されそうなのでココアは口にせず前方の2人を見守る。
何のアクションもなくとも、時間を共有していることが大事なのである。そこから変化を作り出す、余分なくらい堅実な方があの2人には良いと判断したのである。
ヤバい、泣きそう……日曜日にあの2人が一緒にお外を歩いてるなんて……
苦痛の涙なのでは? というかただそれだけで我が主の背中は満身創痍に見えますが
ん、確かに……
――――(←浄化されそう)
……ってもうオーバーヒートでもしてます!? ちょ、早過ぎるって――!!
氷条参席、まさかの散歩だけで限界に達する。
何もしてないのに失敗する未来もちらついたココア、頭に叩き込んだ上野雑誌の知識を召喚!
ツララ先輩、早過ぎる気もしますけどちょっと休憩しません? 落ち着いて座れる場所で!
お、おお……! では、それに乗じようか……(←鼻血寸止め)
??????(←助けを求める)
(いやコッチ見るな、私だって帰りたいですよ)
フォロー発動、あまり気乗りのしない行動を起こす。行動すればするほど失敗しそうで心境的には避けたいものだが、かといって当然ただ散歩し続けるのも無味もしくは薄味でやはり苦行。
ユラ、タマ、双方のコンディションをその場で分析しながら上野区をどう歩くか、どこで思い切ってみるか、それをジャッジしていくことこそが本日のココアの重すぎるミッション。
その1発目の勇気に満ちたアドリブ――
ほう、ここは……
手始めは緩急の差がなさそうな場所。落ち着いた雰囲気で和やかに過ごせる有料公園にしました。多分、ここならタマ先輩の心もヒーリングできると思います(←小声)
有料公園……?
公園にしては割高な入場料を支払い、4人、いや2人2組は園内へ。
それなりにお客盛況、だがそれ以上に目と耳に入り広がるのは――
にゃーー
……なー?
しゃー
――!! こ、ここは……!!
何ですかここ、ネコ科だらけですが
近頃話題の、にゃんにゃん公園! 個性豊かだけど総じて人懐っこいネコちゃんの楽園、一方で入場した人間をお帰り時には1人残らずふにゃふにゃにする人格処刑ランドです……
可愛い子猫の光景の片隅に、寝転がって遊んで、もしくは遊ばれている人の姿を捨てた大人の姿。
人間を刹那にして堕落させる、禁忌を冒した超危険スポットである。
とてつもなく危ない橋渡ってませんか? 何が、特に何かやるつもりない、ですか
いえ……私が最優先に考えてるのはタマ先輩のメンタルですので。ツララ先輩は今日ずっと上機嫌でしょうから最悪放置で良いんです。となると、まずタマ先輩をフォローするのが大事そうで
休憩が目的ではあったので、見つけた空きベンチにツララ先輩を座らせた。
もちろんその隣にはしっかり不憫先輩である。
タマ先輩、ツララ先輩のことよろしくお願いしますね! といってもただ座ってるだけでいいので!!
え!?
私とウミナリさんはあそこでお昼寝してるネコちゃんと戯れてきますのでーー!!
…………(←ストレス倍プッシュ)
Wデートという体を維持して、ココア達は距離を作って2人の様子を見守るのである。
にゃー(←頭に乗っかる)
……言っておきますが私は小動物だろうが容赦無く狩りますよ。獅子搏兎ってやつです
にゃー?
ウミナリさん大人げないですよッ、あと一瞬で出禁になるので!! それに、ネコちゃん云々というよりは2人を見ておかないと……会話に発展はできなくともタマ先輩のコンディションを……
何故ここならば弐席のコンディションを保全できると判断できるのですか?
だってタマ先輩可愛いもの大好きですし
ベンチの方にネコちゃんが寄ってきた。
そして身軽にジャーンプ。ふにっ、とタマの頭に着地を決め込んだ。
――!!!
なー?
うわ、すごい跳躍力……あはは、すごいねー、でも重いよー……!
なー💖
――――
ココアの思惑は見事に的射る。
本日ずっと苦悩に苛まれていた被害者の顔に初めて、安らぎの笑顔が拡がった。
ちなみにその隣の氷条参席は真顔中の真顔で可愛い弐席の頭を侵略する小動物を凝視していた。
わー、タマ先輩の珍しいふにゃんな姿! あはは、見てくださいよウミナリさん学園じゃ滅多に見れないですよー!!
その隣の我が主の雰囲気ぶち壊しな顔面に注目するべきでは?
殺意を侍従は感じ取った。
……まさか、ネコ相手にガチの嫉妬を起こして……? 侍従として恥じ入り共倒れなのですが……
いえ、大丈夫ですよウミナリさん! ツララ先輩はそんな真っ暗なこと考えてません
主のガチっぷりに失望を禁じ得ない侍従。だがココアはしっかりと、氷条参席の頭を理解していた。
アレは多分、ネコさんがタマ先輩の頭に乗っかったことから、合体して白ネコ耳のタマ先輩を連想して必死に鼻血を抑え込んでる顔面ですよ。生徒会室に居る時半分くらいあの顔です。だから安心してください!
もっと失望なんですが
結局侍従が失意に苛まれつつも、ココア的には良い効果。
ほのぼのし始めた(?)ベンチのお2人に、更にネコちゃんもう1匹。
……!
にゃ~
あろうことか、ユラのお膝ソファに白いネコちゃんがシットダウンした。
……ユラはその不届き者を両腕で身柄拘束。要は抱いてみた。
……人の手で管理されている割に、野蛮な子猫ですね。行儀がなってません(←表ver.)
にゃー……ごろごろ……💖
無礼千万。ふふ……多少躾けをしてやりましょう(←なでなで)
な~💖
氷条参席、恐ろしく普通の様相で子猫と戯れる。
目撃してしまったウミナリ侍従は吐き気を催していた。
……もう、帰っていいですか……?
いやいや大丈夫ですよ! アレはツララ先輩ですから!!
あんなオーソドックスにネコと遊んで癒やされている我が主など見るくらいなら部屋にゴキブリホイホイ設置してる方が遙かに良い休日だった……
確かに気持ちは分かりますけどッ、あれは全然オーソドックスではないんですよ!!
ココアは氷条参席の心理を洞見しているのである。
アレは多分、自分の体温を移したこのネコをタマくんの膝に載せたならそれはもう自分がタマくんに膝枕してもらってるようなものじゃないか? って思いついてる顔面です。生徒会室にいる時半分くらいあの顔です、だから安心してください!!
帰っていいですか?(←懇願)
「「「にゃー」」」
ともかく、1人を除いて全員のコンディションが回復したのだった。
Wデートはまだまだ続く……。