[4-01]兎に角謝り伏さないと

あらすじ

「ふぅ……見通さなきゃいけない資料の山に流石に焦っちゃった」

お待たせしました、遂に最後の1人が登場です。

最凶[し]の四字熟語をやる前に、8ページ構成のインサートエピソード4を挟みます。

スタート!

ココア

ふ~、気付けば四字熟語辞典、あと少しで半分くらいになるのかな

ある日の放課後。

いつも通り玉ノ伍席ココアは生徒会室に、漢字の勉強をする為に向かっていった。

休憩用のお菓子、盟友であるユラとハコへの差し入れ感覚のお菓子も買ったり作ったりで用意済みである。

ココア

えへへ、毎日忙しいしユサさんとか普通に迷惑かましてくれるけど、充実してて楽しいな……!!

死語もといマニアック化してる漢字表現に詳しい資格となるレコンキスタ検定。ココアの得点力はきっとそれなりに上昇していた。

努力が形になるのは嬉しいことである。普段ポンコツで点数取れないタイプのココアにとっては免疫のない刺激。尚更にへらにへらが止まらないのである。

ココア

よーし、この勢いで量的には一番ヤバいらしい[し]の四字熟語、制覇するぞー!!

終始テンションが高めな勢いココア、生徒会室にバーンと入室。

すると――

ココア

……あ――

――その勢いが急激に静まりゆく。

その視界に、彼女が映ったからである。

タマ

……………………

複数台の業務用デバイスを殆ど同時に操り、文字を入力し、データを打ち込み、計算を抽出し、外部情報を参照し……。

冷静に見ればとんでもない作業量。とても忙殺的で騒がしい筈のマルチタスク。にも関わらず、そこに拡がるのは貫かれた静寂と評するが適切。

1秒の途切れもなく、テーブルは組まれ、起承転結と論拠は結びつけられ、文書は出来上がったかと思えば印刷デバイスへとデータが渡される。一連の仕事姿はもはや、他人を見蕩れさせるほどのヒンヤリした美しさ。

ドーンと扉を開けた騒がしいココアも、そっから静かに眺めてしまっていた。そんな異物に、一区切りをつけた彼女は目を遣った。

タマ

あ……ココアちゃん

ココア

タマ先輩、来てたんですね……何だか、この小屋で仕事してる姿、久し振りな気がします

タマ

ふふ、私もそんな感じかも……最近、放課後はずっと出張ばっかりしてたから。その分、事務処理が溜まっちゃってて

ココア

あ、ソレを今やってたんですね……

タマ

ふぅ……見通さなきゃいけない資料の山に流石に焦っちゃったよ。多分、何とかなったけどね。仕事は溜めちゃダメだー……

ココア

……そう、ですね。仕事……は……

タマ

でも1ヶ月分を流石に急ぎすぎたかな……粗があったら参席にご不便をかけてしまう……念のために見直しておこうかな――

ココア

……………………

ココアは静かに。

静か~~にその場で土下座を披露した。

タマ

――え!? な、何してるのココアちゃん!?

ココア

いえ、私がどんだけ愚か者の浮かれココアだったか今更気付きましたので、四字熟語に夢中になって仕事の大半をタマ先輩1人にぶん投げていた事案に気付いたので、兎に角謝り伏さないと……

タマ

い、いやいやいや頭上げてッ、あと立とう!? 制服とおでこが汚れちゃうからッ!

ココア

いえ、さっきまで時間があったらツララ先輩たちと一緒にお菓子食べようとさえ妄想してた私がタマ先輩に頭を上げられるワケがありません……(←深い土下座)

タマ

ココアちゃーーーん……!!!

……というわけで。疑問に思っていた者もいたかもしれない。

何でこの生徒会メンバーの半数は漢字勉強ばっかしてんだ?」ということである。

当たり前だが生徒会には生徒会としてやるべきことがわんさかあるのである。特にこの面子主義な稜泉学園の代表となる玉席にはハイクオリティな学園風紀レポート、提携企業との打ち合わせ、全学生の関わる予算の調整などなど結構ガチの仕事が確定しており、何より量が多い。

だというのにレコンキスタ検定とかいうネット検索しても全然出てこない謎の検定の勉強に現を抜かしており、更に2人ほどその勉強に盛大に巻き込まれており、しかも会長は全然出席しないという怠慢を日々かましておきながら何故この壊滅運営の現政権は生き残っているのか?

その理由は、ある意味単純明快。玉ノ弐席――副会長であるタマなる少女が睡眠不足で毎日疲れを溜めながらもその全ての放置された仕事を消費してきたからである。

したがって、ココア様一行が漢字勉強に集中できる理由。それは究極的にはこの副会長が居たから。そこまで考えが行き着けば自然と頭が地に着くのも至極当然のことなのであった。

タマ

こ、ココアちゃ~んお願いだから頭上げてよ~……(←慌)

ココア

上がりません……!! 上がるわけが、ありませんッ!!

このあと何の生産性もない数分その状態が続き……。

静かにメソメソし出しちゃったポンコツ後輩をハイスペック過ぎる先輩が優しく慰める形で極限の気まずさは解消されていった――