[3-07]稜泉の未来は存外明るい
あらすじ
「「「せぇえええッの――」」」
ゲリラ豪雨事件、その衝撃の結末とは――。
皆様の心の琴線に触れるような、そんなコンテンツを目指しております7節。
スタート!
参席様?
(え……えぇええええええユサさあぁああああああんん!?!?)
(きッ、きっさまあぁああああああああ――!!!)
それは最悪の一撃だった。
むしろ今まで喰らっていなかったことが奇跡ではあるのだが、遂に皆が恐懼する氷条参席へと、指が差されたのである。
ただしソレをやったのはもろに知人。ココアに至ってはクラスメイトで友達!!
(そりゃユサさんなら気付いてたでしょうけどぉおお、どうしてこのタイミングで私達を裏切るのおぉおおおお――!?!?)
ふふ……うふふふふ……
ッ……何、を……笑って、いるのですか――? 私に何か、言いたいことでも
あらら、氷条参席ともあろう御方が気付いてませんかぁぁああ? さっき、こう仰ってましたよね?
何を、全く下らないッことに、貴重な会議の時間とやらを費やしているのかッ甚だ理解及ばない……ッ――
!? す、すみません……
行きたければッ……行けばいいでしょう花摘みにッ、伍席が言っていたように生理現象致し方なしッ同じ人間なのだからお互い協力すればいいものをッ、あなた達、は……ッッッ
……何で、「花摘み」なんですか? ココア様は、さっき「小腹が空く時間」って言ってたし、誰かが空腹だっていうのがこの場の認識になってた筈ですよー?
(――!?!?!?!?)
でも……参席様は断言です。早く、トイレに行けと
……………………
な――ま、まさ、か……!?
犯ッ人、は……ッ
再度、たった1人の汗がやばい姫君へと視線が集中する。
否、汗はその場の全員たっぷり流れていた。
それだけこの状況は白熱している――!! 言うまでもなく最悪の状況に転がった!!
(つ……ツララ先ぱああぁああああいいい!!! バ会長、ハコ、フォローを!!)
「「…………」」
(何でまだ黙ったままなのおぉおおお――!?!? どうしちゃったの2人共――)
……ふ……
「「「!!!!」」」
静かに――ユラは笑った。
それは「観念」を意味するもの――
面白い、事を、吹っ掛ける……
――否。
その白目気味の眼差しにはまだ。
闘志が残っている――!!!
そういう貴方こそッ、実は今ッ、とんでもなぁくトイレ行きたいんじゃないんですッかーーーそんな顔してるしッ!!!
(雑すぎますよそのカウンター!! ダメだ、それじゃユサさんは倒せないよツララ先ぱ――)
………………――
バサッ。
ユラの発言の風圧に圧されたかのように、ユサは後ろに倒れた。
お腹を抱えて。
……え……ユサ、さん……?
ふ、ふふ……おかしいな……ポーカーフェイスは、得意なつもりだったんだけ、ど……
え――
いきなり倒れた親友に駆け寄ったココアは。
気付いた。
ま……まさか……
濡れ衣を着せられるのはイヤだからッ、我慢してたんだけど……ああもういいや、何もかもどうでもいい……
(ユサさんだあぁああああああ――!!!)
騒ぎは唐突に終息へと向かいつつあった。
ちょ、倒れるほど苦しいッなら、普通に言えばよかったのに――!!
ユサさん、しっかりッ!! あ、諦めてはッなりませんわ!! 稜泉の淑女としてそれだけは――
ふふ……昼ご飯の牛乳雑炊鍋がダメだったのかな……ココアちゃんに、分けなく…て……よかった、よ――
ユサさぁあああああん!!? しっかりして、踏ん張るのを諦めないでッ、連れてくから――
ココア、今月1番の閃き。
ツララ先輩、ちょっと険悪ムードになっちゃってましたし仲直り的な意味を籠めてユサさんを連れて行ってあげてください!!
――!!! 私のキャラでは無いですが、たまには良いでしょう(←白目)
限界の2人、何とか会議室を脱出することに成功。
結局大きく騒いでしまったが、ユラへの疑いが晴れた形でユラがトイレに行くことができたので、結果オーライ。
ココアは尻餅を着きたくなるくらいの安堵を覚えつつ、それは踏みとどまって自分の席に戻った。
はぁ……ま、全く、騒がしい黑稜生もいたもんだな
ある意味黑稜で最も腕白な御方、それは、それで、良いかもしれません……
はぁ…はぁ……あっはは、あーもう、疲れたなー……じゃあ、どうする? 会議やろっか?
そう、ですわね。いい加減、会議に戻らないと……うん、戻りましょう……うん
2人を除く全員が、再び席に戻った。
ものすごく疲れたココア、ボチボチ再開された議論をボーッと聞きつつ、先ほどまでのデンジャラスな時間を振り返る。
(ユサさんもお騒がせだなぁ……でも、そっか。ツララ先輩は明らかに体調悪そうだったし本当トイレ行きたかったんだろうけど、あの轟音はツララ先輩じゃなくてユサさんのお腹の音だったのか)
途中物凄くヒヤヒヤさせられたこと、後で嫌味に言ってやろうと落ち着いてクールダウンしてきたココアの頭。
そこに、ある言葉がふと反芻された。
濡れ衣を着せられるのはイヤだからッ、我慢してたんだけど……ああもういいや、何もかもどうでもいい……
(…………濡れ衣――?)
「「「ぎゅるるるるるるるるるおぉおおおおおおお――」」」
「「……………………」」
――議論が、大きな音で遮断された。
物凄く最近聞いた覚えのある類いの、エコー掛かった轟音である。
……………………
直前にポツンと現れた疑問について考えていたココアは、それがあってかさっきのように停止状態にはならなかった。
その瞬間を、しっかり知覚できていたのである。
だ…だ、誰、ですのおおぉぉぉぉ……!?!?(←白目)
こ、今度は、誰だぁあぁああああああ!? 今度こそお前達だろぉおお!?(←白目)
そんなワケないでしょぉおお!? もし、そうだったらさっきの流れでッ行ってるしぃいい……!?(←白目)
そうだそうだッ、あ、今度こそお前じゃねーのバ会長!?
だからそーゆーのやめろよなぁあ!? もう行けよーさっさとよぉおお!!(←白目)
……チンケなプライドを固持してッ、さっきみたいに倒れられたらッただただ迷惑なんだぜ……そんなハズいなら目を瞑っててやるからさっさと行くんだぜ……(←白目)
……………………
全員白目で汗まみれ土気顔。
ココアは、全ての真実を受け止めた。
(くっそ、昼飯代浮くからってラーメン拾い食いはやっぱりダメだったか――!!)
(かき氷5杯は、過剰摂取だったなり……っ)
(朝ご飯の豆乳カモ鍋かぁぁぁぁッ!!)
(朝食の海鮮牛乳粥鍋、絶対赦しませんわぁぁぁッ!!)
(シリアル豆乳鍋めぇぇぇぇッ!!)
(おのれ牛乳ほうれん草鍋ぇぇぇぇッ!!)
……………………
そ、ソレですわッ(←起立)!! 皆さんで目を瞑っていてあげましょう、5分くらい! それで、行きたい方は自由に行ってもらいましょう(←白目)
いいねッ(←起立)!! ほら、皆立って立って、誰が立ったかとか分かっちゃわないように、あ、いっそ椅子取りゲームみたいに動き回ってみるッ? そうすりゃ、アレだよアレ!!(←白目)
ああアレねアレッ、えっと、そう、アレだ! 良い感じだよな! よし、ドアを開けておいてッ
じゃあ! せーのッで、目を!! ねッ!?(←白目)
よっしゃ音頭は任せろッ、ウッ…ハァ…ハァ……いくぞ――!!(←白目)
い、いぃぃいくんだぜぇぇぇ……!! 速やかにぃぃ……!!(←白目)
せーーーのッ!!
……………………。
……え……な、何……? 何で皆、目瞑らないの……? ほら、ちゃんとやらないとッ、か、可哀想だって。ね?(←涙目)
そ、そうですわよ。虐めたりなんかしませんわッ、というかドキさんこそどうして開けたままなの? 閉じましょ、ね、お願い(←涙目)
はははッ、これ以上犯人さんを虐めてやるなよぉおお……!! マジやめようぜそういうのッ、一生のお願いだからぁ!!(←涙目)
ほら……目瞑った……皆も、ほら……(←しゃがみ込む)
お、オーケーェエエッ!! じゃ、今度こそッリケンさん、今度こそぉおおお!!?
そうよッ、ほら早く、ウッねえ早くッッ皆で言いましょせーのって言いましょ――
ははは何だよ案外仲良いじゃッねえか、いいぜ稜泉の未来は明るいぃッ!! よし、それじゃ、それじゃあッ、もういっちょ!!
「「「せぇえええッの――」」」
早く全員トイレ行って来おぉおおおおおいいい――!!!
――この日からの、稜泉学園暗黙ルール追加項目。
トイレは迷わず行くべし。