[3-06]この場の全員、席を立ってもらうこと!!
あらすじ
「……いや……実に、面白い時間だったな~って。でも、もうやめにしません?」
デッドオアアライブ、そんな会議の時間が続きます。
私は下痢癖があるので授業でよくこんな戦いを強いられます6節。
スタート!
ふん、騒ぎまくってるところ申し訳無いが、俺はもう犯人分かってるぜ
僕もだ。まぁ、そう考える必要も無いことだがな
ッ――!?
ココアが意気込んだのも束の間。
全身冷や汗で濡れそうな発言が、黑稜白泉双方から飛び出した。
ちょ……は、犯人捜しとか、本当やめません……??(汗)
……ココア様、貴方の気持ちは分かります。同情いたします……ですが
そもそも、アンタがその位に居るってのがおかしかったんじゃねーの?
ッッッ――
「ヤバい、もうバレてる!」とココアは息が詰まった。
どれだけ誤魔化しの策を今から練るにしても、それはまだ犯人の目処が立っていない前提だからこそ有効になる足掻き。
つまり、これは既にゲームオーバー。
「「犯人は――お前だ!!」」
戸惑い無く、2人は。
たった1人の人物を指差した――!!
「「このバ会長!!」」
え、俺?
(――あぶねえぇえええええええ……!!!)
九死に一生を得て呼吸を取り戻したココアだった。
そう、玉席というグループは今とても不利な状況に立たされている。しかし、今は無礼な個人を指名する段階。
つまり、個々のイメージがバイアスとして強力に機能しているのである。
いやいや、だから俺ラーメン喰ってきたって言ってんじゃん
野球部がラーメンぐらいで満腹になるかよ!
この場で最も、というかダントツに失礼な学生はお前に他ならない、故に最優先して疑うべきなのもお前だ
空気読まないのは定番だもんなお前
信頼ねえなぁ俺。助けてココア
……ば、バ会長こういう時は案外マナーそこそこあったりすると、思いますよ?(汗)
ココア、慎重に話の流れを見極める。
1発ゲームオーバーには至らなかったものの、このままバ会長に全ての罪を擦り付けてユラを救済したとしてもソレはよろしくない展開であるからである。
(バ会長っていう失礼の塊がツララ先輩をカバーしてくれるのは良い……だけど、玉席が犯人ってなっちゃうのもダメなんだ)
しかし、そうであるならば玉席が持って行かなければいけない展開とは、犯人でない学生を犯人として結論すること。
ココアとしてはあまりに辛い決断を強いられているのである。だからといって犯人をバカ正直に挙げるのは論外。
故に理想は、結論をつけないこと。この犯人捜しの文脈を有耶無耶にすることがココアの最善の目標となる――!
(バ会長もその場の危機管理は凄く上手だし玉席に不利になるような行動はしない筈……ツララ先輩だってハコだって私よりずっと優秀な人達だもん、皆で空気を読み合えば有耶無耶に持って行くのは無理難題ではない!!)
…………
…………
ふー……ふー……
(そうだ、このまま会議の時間が終わればいいんだ。まだ結構あるけど、このまま誰も犯人として名乗り上げなければタイムアップ解散も夢じゃない!)
会議の質が激落ちすることは避けられないが、贅沢を言っている場合でないのである。
早速ココアはこの方針をサイレントで共有する方法を考え――
てか、それは安直過ぎんだろー、どうせ俺でしょって理由になってないもんソレ。俺が犯人だと思ってるというより、犯人役を俺に押し付けてるって印象が強いんだが
「「「ッ――!」」」
(! バ会長!?)
だとしたら酷いよなぁ……お前らも黙ってないで会長の俺をカバーしてくれよー。ツララとかさぁ
(えぇええバ会長おぉおぉぉぉぉ!?!?)
どうですの、参席!!
黙りこくってないで、何か発言してくださいよツララ参席よー!
コラ、失礼だぞ我らが氷条の姫に向かってその口は――
……………………
「「「!?!?!?」」」
出席者が揃って、一番注目されちゃいけない存在へと注目し、そして固まった。
各々のイメージ像に差異あれど、今の彼女より迸る空気は全くそれらとはかけ離れていたからである。
さ……参席……? どうされたんですか、その鬼気迫る表情――
もしかして、メチャメチャ……怒ってる、的な――
……ッ…らん……
え?
くだ、らぁああああああああん――!!!!
声を振り絞るように、もはや切れ切れの声で、冷静に聞いたなら明らかに普通じゃない不健康的な叫びが会議室に広がった。
…………場が凍った。
――――――(←死にそう)
何を、全く下らないッことに、貴重な会議の時間とやらを費やしているのかッ甚だ理解及ばない……ッ――
!? す、すみません……
行きたければッ……行けばいいでしょう花摘みにッ、伍席が言っていたように生理現象致し方なしッ同じ人間なのだからお互い協力すればいいものをッ、あなた達、は……ッッッ(←呼吸がおかしい)
申し訳ありません、参席――!!
(こ、これが黑稜の最高層……何でそんなにプライド高い連中まで跪いてるんだって疑問にはなってたけど、この凄まじい覇気……てか怖ッ!!)
(下手に逆らわない方がいい……黑稜だからとかじゃなく、この先輩が恐ろしい――)
……………………。
少しの時間、沈黙が全員を支配した。
(……あ……あっぶねえぇええええ……!?!?)
その時間で、ココアは息を吹き返した。
もうダメだと思ってたのである。
(もう明らかに体調悪いのバレバレの筈なのに、ツララ先輩のイメージ像が何とかカモフラージュしてくれてる……!! 奇跡だ、まだ首の皮繋がってるのミラクルだよ!!)
しかし状況はあんまり変わっていない。
そして変えるとしたら、今以外にないことをココアは分かっていた。
(ツララ先輩が犯人捜しの空気を破壊してくれた今この時を活かさないわけにはいかない……! てかあの様子じゃタイムアップを待ってたら多分ツララ先輩が間に合わない……)
ココア、自分に鞭を打ち思考を再開する。
どうやってユラをこの部屋から出してトイレに行かせるか? それも、彼女が疑われるような不自然さを排除した上で。
(どうする……? 会議にトイレタイムなんて挟んだことないし、いきなりそんなものを提案してもソレ自体が不自然に思われる可能性高い……いや、今なら犯人捜しの空気にトドメを差すという意味合いで提案ができる、ただし1人だけ席を立ったなら――)
ココア、一生懸命考える。
その最中も沈黙は続いたままである。
…………
…………
…………
…………
…………
…………
…………
(――って何でバ会長とハコまで黙ってるのォ、ツララ先輩のこと分かってるでしょ!! 本当なら、こういう時こそ賢すぎるハコが活躍してくれるのに……バ会長もさっき余計なことしてくれたし、2人が役に立たないよぉぉ!!)
しかし、ココアは不慣れながらも作戦を作り出した。
トイレタイムを提案するとして、1人席を立ったならそれでゲームオーバー。数人立ってくれたとしても、その人達への疑いが一気に強くなることはもはや自動成立する事態。
……よって、求められることは!
(この場の全員、席を立ってもらうこと!!)
……!!
(任せてくださいツララ先輩、黑稜の方々をこのフロア、白泉の方々を1つ上のフロア、私達を下のフロアのトイレって感じに誘導します!! 作戦の微調整はハコにぶん投げる!!!)
ココア、刹那のアイコンタクトをしてから……
希望の一擲、その手を挙げる――
――ふふ――
――その、直前。
本当に直前。
彼女は笑った。
? ユサ殿、どうかしましたか?
……いや……実に、面白い時間だったな~って。でも、もうやめにしません?
ッ――!!
参席様?