[3-03]我が主
あらすじ
「相手方も、貴方様に対して充分に気を配るべきだとプレッシャーを持っている証拠でしょう。一種の評価とでも解釈ください」
なんともう1人、このタイミングで新キャラ登場です。
本作はラブコメよりも下ネタで満ち溢れてる申し訳無い3節。
スタート!
再度の復習である。
黑稜とは、政治の場である。
「「ははは」」
「「うふふ」」
ブランド背負いし者たちが、その興亡進退を懸けて智略を巡らしている、戦場なのである。
ある時は自分自身の研磨を。
またある時は他者の陥落を。
はたまたある時は合併吸収の策を。
――今後、少なくとも私貴方とが交わる事は無いでしょう
!? お、お待ちください参席――それは、それだけはッお願いします!!?
ごきげんよう
――――――――
マスダさんが倒れたぞ……!! 誰か、保健室にッ
いや、精神病院とか診療科の方が適切なのでは――?
氷条参席様に見限られたとなれば、お気の毒ですが……もはや一蹶不振、返り咲きの機会は絶望的ですわね……
……それで? 貴方がたも揃って此処に居合わせたということは単なる偶然とは思えませんが、もしや私に何か用事でもありましたか?
「「――!?!?」」
裏で随分と忙しくされていたみたいですが。別に気を配る必要はありませんよ。今、この場で、どうぞ気兼ねなく言いたい事を
ッ……そ、それは……別に
な、何でもありませんわ、本当に偶然この場に居たというだけですのよ……!!
気に障ってしまいましたら申し訳ありませんッ、今すぐ立ち去りますので――!!!
成功、そして躍進を求めることは当然のこと。
しかし失敗しないことは前提である。
故に背負いし者たちは積極的に戦場を利用する。一方で、絶対に倒れないように注意する。
引き際を見極め、落ち着いていく。それが黑稜の青春の流れなのである。
(かなり野心的に動いていたあのメンバーの牙を一瞬で折った……矢張り氷条の姫の陥落など不可能だ――)
(これ以上の攻めは、自滅に直結する……近付いちゃいけない、あの凍える空気には)
本日も勢力図は特に変わらず。
カーストの滑り台を転げ落ちた女子1名、それ以外はギリギリ踏みとどまり、氷条の姫の権威は確立された。
表の姿の彼女には、殆ど誰も近付くことはしない。前提を守るために。
滑り落ちてしまわぬように、思考を調整する――
……失礼。通ります
え、あ――!
そんな黑稜のカーストピラミッド戦場において、大半の学生はそんな感じの活動・立ち回りが強制される状態なのだが。
例外は存在する。
……ごきげんよう。何か用でも? ウミナリ
我が主。週末に控えています例の会談にて急遽確認願いたいものがございます
なるほど、予想は付いていましたが案の定、直前に挿れてきましたか。相変わらずやり方が細々としている
相手方も、貴方様に対して充分に気を配るべきだとプレッシャーを持っている証拠でしょう。一種の評価とでも解釈ください
よろしい、場所を換えましょう
それは――初めから誰かに仕える立場にあること。
すなわち、「侍従」である。
ウミナリ様……あの氷条参席に何の躊躇もなく歩み寄れるだなんて
侍従だから当たり前、なんだろうが……侍従とはいえ凄い、と思ってしまう
氷条参席様とウミナリ侍従様……あのツーショットはやはり、絵になりますわ。私では到底、入ることのできない領域――
相当のブランドを持つ学生となれば、相当の富豪であることも珍しくない。そしてそんな学生は既に「主」と認識され、守るべき主を守る「侍従」の血統が既に存在することも珍しくない。
そのような立場にある者は、ある意味考えることが少なくて済むのである。何故ならば、戦場を主体的に駆け回るべきは主であり、侍従はその活動を支援するだけだからである。
代わりに、他の学生のように野心を働かせた場合に殆ど覆すことの不可能な困難に囲まれる。良くも悪くも彼らの立場は彼らの努力で変わることが無い、そんな例外。
ウミナリと名乗るこの第2学年女子もまた、その一人。
……それにしても、1つ気がかりなことがあるのですが
何ですか。気兼ねなく口にしなさい侍従。代わりに私も、1つ貴方に言っておくことにします。
間違っても主に無礼な振る舞いをしちゃいけない立場の彼女は。
生徒会室に場所を移したところで、ため息をついた――
今日の口臭キツくないですか? ドブでも飲んできたのかと思いました(←臨戦態勢)
君こそTHE・雑菌の巣窟みたいな口臭してるけどキーボードでもペロペロ舐めてきたのか? 健康に悪いぞ(←臨戦態勢)
ちょ、いきなり生徒会室入ってきて何なんですかぁ!?