[3-01]ブランドを進化させる
あらすじ
「故に、既にブランドを確立している者が背負うべき義務とは、更に生き残り続けることなのだ。勝ち続ける為に、ブランドは更なる強さを求められるのだ!」
自信に満ち溢れた新キャラが登場します。
第一印象以降で勝負するインサートエピソード第三幕、その1節です。
スタート!
学園とはどのような場所であるか?
白泉キャンパスを含める、一般的な学校であればシンプルに「勉強する場所」「友達と会う、または作る場所」「遊び場」などと回答を出す程度でも良いだろう。
しかし、このキャンパスにおいて出すべき回答には、必ず以下の要素を入れなければ不正解である。
――黑稜とは、政治の場である。
「「ごきげんよう」」
「「ごきげんよう」」
「「ははは」」
「「うふふ」」
挨拶。声を掛ける。応じる。共に歩く。会話する。笑う。笑いかける。相槌。
鞄を置く。物を取り出す。起立・着席。ノートを捲る。シャープペンシルの音。消しゴム。
食事。その場所取り。昼休みや休み時間の行動スケジュール。放課後の帰路に立つタイミング。
稜泉における全ての自分の行動には、背負いし看板と関係する家族や労働者の未来がいちいち関連付いている。
すなわち――それら全てが、戦略。
その生活がすなわち、戦いそのものなのである。
――ブランド背負う一人である、お前に問おう
ここに、一人の男がいる。
張り詰めた黑稜キャンパスの正装。そこに自信しか感じない証を重ね纏い、真っ直ぐ仁王立ちする……
ブランド主義に燃える瞳で、現在ちんまい令嬢を見下している男子。
己が勝利の証たるブランド、これを更なる境地へと進化させるためには、どうしたらいいと考える?
ブランドを進化させる、ですか……? 何を言ってるのか全然分からないんですが……
フッ、まぁ無理も無いだろうな。親の築き上げた勝利を引き継いだまま何もせず、いわば惰性の雲に乗って黑稜の道をのんびり進んでいるお前に分かる道理も無かろう
すっっっっごいバカにされてることだけは分かりますよ!!
いいか、よく聞け。ブランドとは不変のモノではない。どれだけの誉れ受けるべき大勝も、時間が経てばその輝きも何もしなければ風化の一途を辿るのみ。芯まで腐れば、築き上げられたその容姿も簡単に崩れ壊れるだろう
はぁ
故に、既にブランドを確立している者が背負うべき義務とは、更に生き残り続けることなのだ。勝ち続ける為に、ブランドは更なる強さを求められるのだ。ココア君、お前は玉席という立場にはあるものの、ただそれだけ。生き残るための努力など何一つやっていない怠慢で真っ先に落ちぶれる哀れな二世なのだ!!
ホントよく真正面からそういう罵倒を本人にぶつけられますよね!!! 私、そろそろ泣きますよ!!
罵倒じゃない、非難だ。そしてお前に幾らかヒントをやっているんだ。むしろ有難く耳を傾けていろ
後輩のちっちゃい女の子に、あの大人気のココア様に容赦無い言葉を浴びせているこの男は、黑稜でも非常に有名な存在であった。
真正面そして攻めの姿勢で戦場を走り抜ける、「正当正義」のブランドに取り憑かれた野心。
ブランドの研磨に余念が無い、黑稜屈指の勝ち組。
進化の手段には、主に3種類ある。まず、最も用いられているのが……相手よりも上であると実証することだ。俗に言えば、落とし合いだな
何か、あんまり良い響きじゃないですね
そこは同感だ。勝負の場である以上それは必ず起こる現象だろう、だが問題は相手を陥れることに意識が傾きがちであることだ。自分の成長ではなく、相手を騙しカーストから落とす作戦を練るのに時間を費やしているカースト上位層は少なくない。全く哀れな姿だ……
ツララ先輩とか割と遊び半分でやってる気がします
言葉が通じる仲であるなら是非ともやめるよう言ってくれ。まぁ彼女も、そして俺もソレでなく自身の研磨によって高みへ昇り詰めているから、お前はまず我々を見倣うが良かろう。コレが2つ目だ
あはは、マキ先輩って本当自信家ですよね
お前のように既にあるモノではなく、自分の力で勝ち上がってきているのだという自負があるからな。そして俺はこれからも研磨を続け、黑稜だけでなく世界の頂上として唯一無二の威光と働きを見せつけて、代々語り継がれる伝説となるだろう!! ふははははは!!!
目指すは頂点。
謙遜も誇張も無くそうハッキリと言葉にしてみせるマキ先輩と呼ばれるこのマント男は、ギラギラと燃え滾っていた。
そんな彼の黑稜の政治は、3年生となったことで新たな領域を含むようになっていた。
……そして、3つ目。今、俺はコレに一番フォーカスしていて、正直言えば困ってもいる
え? マキ先輩が困るだなんて、珍しいですね
まぁそうだな。これまでは俺が頑張れば為すことのできるものばかりだったからだろう。だがこの、合併という要素は相手の品質に依ってくるだろう?
そう、野心塗れの彼は今困っていた。
もう一つの、ブランド進化の為の強力な手段、本人も未経験の領域。
他に大差をつけ一気に圧倒する権力の「合併」、すなわち!!
――この俺の妻に相応しい女がッ、なかなか見つからない!!!
婚活!?!?