[7-09]もっと周りを信頼しろ

あらすじ

「仰せのままに。我らが冥櫻のミヤビ様」

回収されたココアちゃん、帰途につきます。

この9節がやりたかっただけのインサート7、次回でラストです!

スタート!

ココア

すみませんでした!!

会場へ戻る最中、あらためてココアはしっかりと2人に頭を下げた。

マキ

はぁ……正直、正座説教でもしてやりたいぐらいだが、体調不良となれば追及は保留しておいてやろう

ユサ

あー寿命縮んだ。誰にも見られてなくてホント良かったよー……

ココア

ごめんなさいでした……

マキ

それで、あの金閣と何の話をしていた? お前は何もされていないと言うが

ココア

私のこと、ヤンキーって褒めてくれました!! あんなに褒められたの初めて!!

マキ

褒められてるんだろうか?

ココアは執事さんとのお話を2人と共有する。

マキ

……正しいと思うことを信じ続ける、か。自分たちのことを棚上げしてたいそう偉そうなことだな。抑もお前達の方がアウトサイダーだろっ

ユサ

でも案外その定義だと同じくヤンキーですよね、マキ先輩

マキ

その定義じゃなくても、お前は充分にヤンキーの素質があるぞユサくん

ココア

え、2人もヤンキー!? 私の専売特許が奪われる……!

ユサ

奪われるも何も、専売特許でも何でもない概念でしょ。……皆、それなりにそんなこと分かってるんだよ。結果的に何が正しかったか、自分たちの社会は正しかったのか。……だからこそ、ココアちゃんのやってることって、実のところそんな奇抜でもないんだよ

マキ

つまり異端種なんて呼ばれる筋合いも実際無かろう。……だから、もっと周りを信頼しろ。少なくともお前の属する玉席のメンバーは皆、理解力を持っているだろう?

ココア

マキ先輩……

ユサ

あああと、体調のこと黙ってたのは一番ダメだよ。幾らご両親の頼みであっても……というか愛娘の体調とか考慮できなかった2人にも苦言かましてやろ

ココア

ユサさん……

ココア、あらためて執事の言葉を思い出す。

仲間の言葉と合わさり、深い反省が作られていく。

ココア

……そっか……もっと気楽にやらないと、周りに迷惑かけちゃうのか……

マキ

お前は変なところで自分を蔑ろにする。もっと柔軟に考えろ

ユサ

たまには自分自身をフォローしてあげたら?

ココア

あはは、変なこと言うねユサさん。でも……うん、ちょっと考え直してみる

自分を制御してくれる仲間が居る。それを忘れてはいけないことをココアは学んだ。

全ては、自分がやりたいことを為すために。

ココア

……よぉし、何かすっごい元気になってきた! 景気付けに帰ったらハ行の四字熟語を制覇するぞー!!

ユサ

はいはい無理しないの~、今日はもう安静に――……ココアちゃん、右腕のガーゼ、何?

ココア

え?

ユサの指摘で、ココアは初めて気付いた。

全く身に覚えの無いミニサイズのガーゼが腕に貼られていることに。

マキ

注射……か? まさか何か薬物を盛られたのかッ!!

ココア

いやいやいやそういう感じの人たちじゃないから!!

ユサ

いやそういう人たちだからッ! ココアちゃん、何か体調に変化は?

ココア

……そういえば、何か。パーティー始まった時より、ていうかここ最近で一番調子が良い感じがする

マキ

気持ちがだいぶハイになっているから、信用しづらいな……

ユサ

まあココアちゃんを陥れる価値が無いのは確かだし……でも一体、何を――

ココア

……???

匣の女

……はぁ……

一方の、金閣組は。

匣の女

……お前、覚悟はできてるんですよね

執事

何のことですか?

匣の女

あんなテキトウに喋り倒してッ!!!

当主プンスカで反省会が執り行われていた。

執事

ははは、確かに今日はとても喋り疲れましたね。なるほど、ココア嬢に人が集まる理由がよく分かりました

匣の女

……お前の気まぐれはいつもいつもいっっつも、私の精神を蝕みます。明らかに狙ってるでしょう反逆です

執事

やれやれ、こちらのお嬢は気難しくて困りますねぇ

客も居なくなったので当主はその匣を

執事

とはいえ……根本で似てますねえ、貴方様と

匣の女

何が何と

執事

ココア嬢と、生き方が。あとキャラ付けの濃さも

匣の女

莫迦にしてますね切腹でもしますか、リザ?

執事

滅相もありませんよ、海賊王。……ところで

……上機嫌な執事と弄ばれる令嬢。

しかしここで、ずっと笑っていた執事から笑みが消えた。

執事

結果、出ましたよ。即席鑑定ですがね

匣の女

……無許可で採血とか絶対今頃不審に思われてます

執事

最終的に判断したのはミヤビ嬢ですよ。まあそれは置いといて……本人から具体的な症状を聞いてないから確定はできないですけど、十中八九”エクリプス”の変異系統のどれかでしょうね。しかも、日常的に摂取してるとしか思えない異常濃度です

匣の女

!! エクリプス……どうして、そんなモノを――

執事

本人自ら摂取しているとは考えにくいですね。……寝言からして、投与をしているのは――

匣の女

何の為に。エクリプスの類いに明確な利点作用なんて無かった筈

執事

仰る通りで。だから、僕が今のところ疑っているのは副作用の類いです

匣の女

…………

執事

だとしたら”グリムリーパー”の件といい、相変わらずあの男のやり口は卑劣というか臆病というか……おっと、想像で罵倒するのは自重した方がいいですね。そしてミヤビ嬢も、その固まった拳を僕とかにぶつけないでくださいね

憤怒に震えだしている当主からちょっと距離を取っておく執事。

少女も、深呼吸を挟み、心を一度落ち着ける。

執事

一応、敵国の令嬢。……こっからどうするかは、ヤンキーお嬢様にお任せしますよ? 僕はその心に真摯に対応するのみですから

匣の女

お前の忠心など信用してない、仕事をしてなさい。引き続いてこの件の調査を

執事

ココア嬢と会う奇跡の機会は今し方過ぎたっていうのに無茶を……はぁ、仰せのままに。我らが冥櫻のミヤビ様

匣の女

……フンッ……

執事

――貴方様の航路に、我ら”中身”は全てを擲つのですから