[7-01]無意味な匣

あらすじ

「私に――”意味”を――」

様式に従います。過去一で意味不明の開幕語りです。

第7シーズンのインサートエピソード、こちらも第6同様に10ページ編成となります。

スタート!

???

“知っているのがどうした”――

――その匣は、実に美しく研がれ輝いていた。魅了され、焦がれていく。

その中身に何がどれだけ入っているのかを確認することもなく――

???

――”何にもならぬこと。益もなき事”――

匣とは、物を収容する為に存在する器。

収容される物、それを中身と言い、中身があるから匣という概念は成立するだろう。

それは換言するに、中身の無い匣は匣と呼ぶべきではない。ただの何かしらの物。匣として無意味な何かだ。

ではこの匣は、匣たり得るのか? これは、ある意味肯定できるだろう。何故なら物凄く色んなモノが、ここに収容されていたことを私は知っているから。

意味のあった匣。意味を有した世界。

……意味のある、中身――

???

――否

――それは保証されはしない。

抑もある意味で、この匣はしかし意味を確立していない。永遠などというものは滅多にあるものじゃない。この匣の意味は、かつて存在したとしても。

ソレは既に「死んでいる」、ことだってあるのだから。

???

無力・無意味な匣。であるならば、存在せずとも世界は特に何も変わらないに違いない。であるならば、貼り付けられる名前も不要、しかし一方で全ての責を負うべき名は、継承されうる

言葉を出す。内外の接合を破壊しうる言葉。逆にそれを助力もしうる言葉。効率は兎も角、切欠としては有用。次を見つけ出すための整理の一手を。膨大な虚無の瓦礫に挟み入れる。

だがしかし、矢張り言葉というのは強力だ。その力が、しばしば思考を強制する。良い方にも。悪い方にも。

――無意味、だったら? もう無きに等しい骸の墓でしかないとしたら?

それは、中身たちにとっては世界と断絶されたようなものではないだろうか。無意味とはそういうことだ。

もう何も変わることはない。そして逆に、変えられることもない。世界が何であろうとも、どのような変化があろうとも。誰かが燃やされて、誰かが胸貫かれて。誰かが泣いて叫び、壊れようとも。

ソレと繋がることはない。有と無の境はあまりにも大きいのだから。それ依然に、此処は元からソレに近い世界であるのだから。

彼方からして、私は、無意味、であるのだから――

???

……………………

すなわち此処は、実質的に中身の無いような何か。すなわち匣そのもの。

開けば、見苦しく、聞き苦しく、評するに堪えない冥き黄金の跡。

責の札で封をして、地中や深海に落として忘却されればいい……きっとそういう結論の、全要素。

その一つでしかない私は――

???

……生きてる……私、だって……

無意味なモノが叫んだって所詮無意味。

だけど、私は叫ぼうとする。

無意味な中身は、意思と呼べる反逆を有していた。

???

求めるもの、そのあらゆる全てが叶うお宝がこの世の何処かに眠っているらしいよ。誰かが眠らせたとも聞いたかな

だって、消えていないから。

死んでいないから。

貴方の言葉が。背の遠くなる貴方が私の脳裏から、無くならないから。

???

私は――ソレを探しに行く。海賊王イオリッシュ……なんちゃら? そんな感じでね

ふんわりと、貴方は消えた。根源虚無をこじ開けて。私を取り残して。

……貴方であればきっとこの私を、足を動かさないだけだとでも非難するのだろう。そんな、気がする。

???

待って……待って、ミヤビ――

事実の認識を繰り返す。

この頂点美の領域は冥府の焔に落ちたと同時に、不可逆を作り出す強い衝撃で開かれたのだ。

だから――叫ぶのだ。

???

待って……ッ!!

手を伸ばすのだ。

???

置いてかないで……独りに、しないで――

この手は間違いなく、求めの証左。

生まれ変わることは自身のみでは為し得ないのを知るが故に、ソレは最後の希望。

すなわち、よく知る結論と噛み合わない、すなわち別の結論に着地する可能性。

――どうか私にも、その「お宝」を。

こんな私にも応えてくれるという奇跡を。

???

私に――”意味”を――

名は他との差を明らかにするための刻みの札。

故に独立的意味を有するモノにこそ付与されるべき概念である。

では……この私は――?

???

私の……名前は……

冥き責を負うべきミヤビ。

将来なるべき海賊王イオリッシュ。

……違う、どれもまだ適切な具体度ではない。抑も、私は独立的意味を有するのだろうか?

あの場所から出て、歩き始めたばかりの私は……まだ、匣の一部。

???

私は……匣――

ココア

へぇー、ハコちゃんって言うんだ?

???

っ!? え!?

ココア

うわ、どうしたの!? あ、びっくりさせちゃった? ごめんごめん、ちょっと声が聞こえたから……海賊王イオリッシュ、なんちゃら……? ってのは流石に本名じゃなさそうだから気になってたんだよね。それでついつい聞き耳を……

???

……あな、たは……

ココア

同じ玉席! これからよろしくねハコちゃん。私、ココア! いつか強くてカッコいいヤンキーに内定するであろう同級生だよ。あ、でもほっぺたぶん殴られたばかりだから暫くは自重してます……

???

(ヤンキー? どこが? というか……名前――)

私は、まだ意味的な区別に値しない。

ゆえに。

まだこの存在は、同一的に匣とでも呼ばれていればいいのだろう――