[2-01]俺が相手になってやるよ?
あらすじ
「場を治められていないという意味では玉席側の力不足なのではないですか?」
部活長会議の1ページ。
そろそろ男性キャラが欲しいインサートエピソード2章の始まりです。
スタート!
――玉席。
それは稜泉学園の学生所属団体の中で最高位にあたる組織。それは白泉は勿論のこと、黑稜の如何なるカースト層の学生をも凌ぐ権力を有することをも意味している。
ブランド主義の歴史に生きてきた稜泉学園。その学生にとって、玉席に座すというのは極めて光栄な実績となる。それと同時に、最高位であることの責任を負うことになる。
つまりは、それ相応の仕事が待っているのである。その代表となるのが、「団体長会議」である。
我が漫研の予算を今度こそ増加処置してもらいたい!!
お前らの部活に予算なんて必要無いだろ! それよりかは遙かに俺たちテニス部の――
“白泉”としっかり付けてくださらない白泉テニス部長?
……なんだぁ? 黑稜のテニス部様は先月アップしたんだから特に今回何か文句あるわけじゃないよなぁ?
はーーい喧嘩はここじゃないどこかでやってくださーい!!
ココア様、今日も健気なお姿だわ……(←撮影)
はいソコッ、部活動しないで新聞部さん!! せめて被写体に撮影許可してください!!
月に1度、主に各団体の予算を調整する為に、ソレを担う玉席と代表学生が面向かい合う重大なイベント。今回お送りしているのは公認の部活動らが予算の奪い合いをしてるシーンである。
そして毎度、ココアたち玉席が疲弊させられる厄介な表舞台である。
何か今回どこの予算が上がるのかって予算を必ず上げる前提になってるけどソレ違うんだぜーー!!(←表ver.)
その通りですね。隣の部同士の競り合いという相対的な基準を設けた覚えはありません。あくまで、その部に予算を割り当てるに値するか否か、むしろ絶対的な基準で以て我々は吟味しています(←表ver.)
ってことでその喧嘩腰は全部無駄なんだぜ!! 時間が勿体ないんだぜ
ちょ、ヘイト集めるようなこと言わないでっ……
これは各団体がより優位な活動をしていく為に間違いなく重要なイベント。しかし、玉席の者達にとっても、良くも悪くもコレは意義のある時間。
「代表者が戦う相手は玉席」なのである。
いっつもそういう尤もな事言われるけどなぁ! そりゃ軽く高みの見物してるだけのヤツのセリフじゃねえか。公式の大会で実績上げろとか、毎月あるわけねえだろそんなデカい大会!!
バスケ部に限らず、いつも大会があるわけじゃないし、抑もその大会で勝ちたいからソレに必要な予算を求めてるんじゃないか! 設備の品質の向上どころか維持だって結構なコストなんだぞ
遠征を組むのだって勿論金掛かるしな。そんなに金欠だっていうなら、他の弱小部活の予算をもっと絞ればいいじゃないか。例えば……黑稜のテニス部さんとか?
な――!
ああもう、また始まった……
一般学生側が、玉席の力を見極める。これはそんな時間にもなっているのである。
自分達の学園を運転する学生代表がどんな手腕を振るうのか。その者が玉席であるのは「適当」なのか。
すなわちココア達にとって、これは自分を試されている戦場なのである。特に、最も注目を集めるべき者は――
だから話が飛躍する喧嘩は余所で……この海賊王イオリッシュ=ゼンポウ=コウエンフンの船の上とかでするんだぜー!!
プライベートな提案混ぜないのハコ!! 船持ってないでしょ!!
……そもそも、場を治められていないという意味では玉席側の力不足なのではないですか?
相変わらず上から目線のご意見ですね、黑稜の吹奏楽部長
既に実績で予算を多く戴いているので、予算に関して我が部は何の要求もありませんから。先月同様の月予算であればね
では、そのまま無言で過ごして戴いてもよろしいのですよ。わざわざ、我々に棘を向ける危険を冒す必要も無いものを
勘違いしていただきたくないのですが、参席様にご不満はある筈はありませんわ。……ただ、問題は半数以上玉席として相応しいか疑わしい者が就いていることでしょう
(ああクッソまたそういう話題に入りやがったこのネームバリューだけで審査員絡め取る腐れ吹奏楽部め)
(完全に調子乗ってます矢張り紅茶飲んでばかりの団体にあれほどの予算割り当ててやったのは悪手だったんです)
ブランドレスなうえ意味不明な言動を繰り返し多くの学生に不快な思いを与えている肆席会計、同じくブランドレスにも関わらず参席氷条様より高位にある弐席副会長
ん??(←沸点の顔)
(その顔抑えて抑えて!! しまって!!)
そして何よりッ、こういった公の場に滅多に姿を現さない、全ての始まりたる会長殿が矢張り欠席というのは如何様な言い訳をお考えなのでしょうか!!
確かに。団体長会議を常に欠席するなど、我々を侮辱しているとも受け取れる。最高位の学生として適切とは思えませんね
うっ――どうしよコレ、ぶっちゃけ言い訳できませんよ……!
適切ではないのは確かだからな……ま、テキトウに流しとけいつも通り
予算の話の筋から離れてます、とっとと軌道修正しなさいココア
えっ私がやるの!? カースト上位の方々だよ黑稜の部長たち、怖いよー
ブランドレスな私が言っても全部火に油です、ヤンキー志してるんだから――
まったく、会長に抜擢されるだけの人々を扇動するカリスマ性はあるのやもしれませんが、この稜泉を牽引するという覚悟すら感じられません――
もうお察しかもしれないが、現生徒会は特に黑稜の学生たちには「不適切」の反発を貰いまくっている。
そんな彼らと直接会話をしなければならない故に、この団体長会議はココア達が最高に嫌う定例イベントである。
今回もいつも通り自分たちへの批判に帰結する。ということで颯爽とこの文脈を掻き消してしまおう――ココアやユラがため息混じりに対応しようとした……
その時。
――誰の覚悟が感じられないって?
いつも通りではない、声がその場所に響いた。
え……?
んんんん――(←頭痛)
「「「……!!!」」」
いつの間にか開かれていた会議室の扉。
その前には、稜泉における公的な場に立つ際の格好として誰が見てもダメ出ししそうな、乱れた格好。
どう考えても今は要らない金属バットで軽く肩叩きをしながら。
その少年は笑う。
じゃあお望み通り――俺が相手になってやるよ?
バ会長――!!!
現生徒会のトップ、すなわち。
玉ノ壱席。あだ名「バ会長」の少年が会議の空間へ歩き出したその時には。
その空気感は既に彼の支配下であった――